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生活への影響は?OTC類似薬の保険適用除外を検討へ

生活への影響は?OTC類似薬の保険適用除外を検討へ

13日に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針、いわゆる「骨太の方針」において、市販薬と似た処方薬のOTC類似薬の保険給付のあり方について、見直しを十分検討すると盛り込まれたと朝日新聞などが報じました。日本維新の会は現役世代の保険負担軽減を図るためなどとして、公的医療保険の対象外とするよう求めていました。このOTC類似薬が保険適用対象外となることで、私たちにどのような影響があるのでしょうか?6月21日放送『北野誠のズバリサタデー』(CBCラジオ)では、本郷赤門前クリニック院長で医学博士の吉田たかよし先生が、OTC類似薬について解説しました。聞き手はパーソナリティの北野誠と加藤由香アナウンサーです。

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意外と身近、OTC類似薬

そもそも、OTC類似薬とはどのような薬なのでしょうか?

薬には医師の書いた処方せんがないと買えない「処方薬」と、ドラッグストアなどで誰でもどこでも買える「市販薬」の2種類がありますが、この後者の市販薬が「OTC医薬品」と呼ばれます。

かつて薬局のカウンター越しに買うことが多かったため、「オーバー・ザ・カウンター」の略で「OTC」という名前になっています。

一方、今回話題となっている「OTC類似薬」は、処方薬でありながら薬の成分は市販薬とほぼ同じ、保険適用の3割程度で買えるというものです。
有名なものでは、鎮痛解熱剤のロキソニンや花粉の時期によく使われるアレグラ、胃酸などを抑えるガスターなどがあります。

吉田先生によれば、処方薬がOTC類似薬になるにはパターンがあるとのこと。
処方薬として登場し、時間が経ってデータが集まってきて副作用がかなり軽くて安全だと判断されることで、処方せんがなくても買えるよう同じ成分の薬が市販されます。

保険適用外にしたい理由

政府がOTC類似薬を保険適用外にしようと考えている理由は、社会保障費の増大。

ドラッグストアで買うよりも保険適用で処方薬を買った方が安い、という理由で病院に行く人もいます。

重い病気の場合ならともかく、特に異変はないのに「とりあえず湿布薬をもらっておきたい」と通院する人が増えると、保険の負担が増えてしまいます。
保険適用外になることで、診察代が余分にかかるため、市販薬に切り替える人の増加を狙ってのものです。

日本医師会は反対の姿勢

この保険適用外の動きに最も反対しているのは、日本医師会です。

吉田「ぶっちゃけ本音を言えば、開業している医者にとって患者さんが減るような政策は嫌だなっていうことはもちろんあるわけですけど。
公式に表明しているのは、気軽に病院に行くことがなくなってしまうと、医者が重大な病気を早期に見つけ出す機会を逃してしまうと。
気づいてしまった時はもう手遅れということになるわけで、命に関わりますよね。

また重症化してから病院に来ると、初期の段階のように簡単に治らないので、治療も大がかりになるから、かえって医療費がかかるんじゃないのと、日本医師会は主張しているわけですよね」

そしてもちろん薬代の負担が増えるため、低所得層や子育て世代、難病患者の負担が重くなってしまいます。

最終的にどうなる?

具体的な方針はまだ決まっておらず、これから業界団体や政治家、厚生労働省などが交わって決めていくことになります。

最終的な落としどころはどのあたりになりそうでしょうか?

吉田「日本医師会の主張が通ったら、保険適用外になる薬が湿布薬プラスアルファぐらいでお茶を濁すということになるかもしれない。
医療費の削減を優先すべきだということになったら、徹底的に対象になる薬が増えていく可能性がありますね」

医療費削減と病気の早期発見は両立?

医療費の削減も病気の早期発見を両立する方法はないのでしょうか?

吉田「まず薬剤師さんが中心になって、薬局が薬の選択はもちろん、住民の健康相談とか生活習慣の指導の拠点になっていくということ。

実際モデルケースになった高知県室戸市では、糖尿病とか高血圧の重症化率が低下したというすばらしい実績が出ていますね。

あと、看護師さんや保健師さんが地域を回って、病院にかかる前の段階で生活改善や重病の早期発見を行なうということで、こちらも岡山県の真庭市という町では市民が健康になって入院が減ったというデータが出ている」

看護師さんや薬剤師さん、保健師さんの活躍の場を広げ、医師は高度医療に専念してもらうということをタスクシフティングといい、ヨーロッパではうまく機能しているそうです。

少子高齢化が進む日本において、せっかく維持してきた医療のレベルを落とさないためにも、医療費の削減は真剣に取り組むべき課題といえそうです。
(岡本)
 

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