異例の2回選挙で首相が決定…ドイツでは今、何が起こっている?

ドイツでは6日、保守政党のメルツ氏が新しい首相に選出されましたが、現地メディアでは「これ以上ない悪いスタートを切った」と報じています。というのも、1回目の投票で1位だったフリードリヒ・メルツ氏は過半数に届かず、戦後初めて2回目の投票で決まったため。それだけ支持が不安定な政治基盤ということなのでしょうか?5月7日放送『CBCラジオ #プラス!』では、ドイツにおける政治の現状についてCBC論説室の石塚元章特別解説委員が解説しました。聞き手は永岡歩アナウンサーと三浦優奈です。
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現在、ドイツでは与党で大連立が組まれていて、ほぼ2大政党という状態。
メルツ氏の中道右派の政党「キリスト教民主・社会同盟」と、オラフ・ショルツ前首相の中道左派「社会民主党」が4月に連立が合意しています。
そうすると、今回の選挙で本来は328人の議員がメルツ氏を推し、630人の過半数である316票を超えるはずが、1回目の投票では310票にとどまり、少なくとも18人が造反したことになります。
メルツ氏は2回目の投票で325票を獲得し、過半数を超えて首相になりましたが、それでもまだ造反者はいたということになります。
2大政党といいながら実は前回の選挙で社会民主党は3番手で、2番手に上がってきたのが、いわゆる極右政党の「ドイツのための選択肢」。
また、メルツ氏は移民排斥については「ドイツのための選択肢」に考えが近いため、同じ連立の中でもメルツ氏を支持していない議員が「どうせメルツさんに決まるんだから、お灸を据える意味でも別に入れよう」と別の人に投票したら、意外と多かったのではないかと石塚は評しました。
メルツさんってどんな人?
メルツ氏は過去にメルケル元首相との政争に敗れ、10年ほど政界を離れていたため、閣僚経験もなく政治手腕が疑問視されています。
しかしビジネスには精通していて、政界を引退していた間は世界最大の資産運用会社ブラックロックのドイツ部門の幹部となり、かつて前財務相の結婚式に自家用機で乗りつけたというほどのお金持ちです。
ただ、話すのがあまり得意ではないためアドリブに弱く、失言が少なくないタイプ。
2022年から起きているロシアのウクライナ侵攻で、ドイツへ避難してきた難民に対し、「社会保障を受ける目的で観光しに来た」と呼んで批判を浴びました。
極右政党の人気が高まる動き
「ドイツのための選択肢」が勢いを増しており、大連立をしっかり組むべきところ。しかし同じ中道でも左派寄りと右派寄りとなっているため、思うほどかっちり連立が組めているわけではないのかもしれない、と石塚委員。
現在ヨーロッパでは、ドイツ以外にもフランスやオランダなどでも極右政党が伸びているという状況です。
これらはドナルド・トランプ支持派の人が多く、また、イーロン・マスク氏やJ・D・ヴァンス米副大統領もヨーロッパの極右政党を支持しているという動きがあります。
ドイツで極右の台頭といえば、やはりヒトラーが思い起こされますが、当時も民主的なワイマール憲法を保持していたにもかかわらず民衆が支持し、連立政党を組んでいくうちに結果的にヒトラーが首相になっていったという動きについて、永岡は「今と似ていて怖い感じがします」とまとめました。
(岡本)
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