CBC web | 中部日本放送株式会社 / CBCテレビ / CBCラジオ

MENU

あなたは知っていましたか?フグが水中で眼をつむる「なぜ?」を徹底研究

あなたは知っていましたか?フグが水中で眼をつむる「なぜ?」を徹底研究
「眼をつむるトラフグ」提供:しものせき水族館「海響館」

ある日の出来事だった。水槽の中にいるフグが眼をつむっている。水の中で生きる魚にしては珍しいことだ。「なぜだろうか?その理由を知りたい」。それが研究の始まりだった。

関連リンク

【画像ギャラリー】あなたは知っていましたか?フグが水中で眼をつむる「なぜ?」を徹底研究

水槽の中で見た“驚き”

「海響館の全景」提供:しものせき水族館「海響館」

舞台は、山口県下関市にある「下関市立しものせき水族館(海響館)」。スタッフである荻本啓介さんが、展示水槽の中でフグが眼を閉じていることに気づいた。フグは「フグ目」に分類される。代表的なトラフグやハコフグの他、可愛らしいハリセンボン、痩身のカワハギ、そして大きな体のマンボウも、実はフグの仲間である。世界で約430種もあるというから、フグの世界も広い。下関は全国有数の“フグの街”でもあり、「海響館」では、100種類ほどを展示している。そんなフグの驚くべき“異変”だった。

魚は眼を閉じないのに?

「目を開くモヨウフグ」提供:しものせき水族館「海響館」

人間は、眠る時、眼にごみが入った時、そして乾燥から眼を守る時などに眼をつむる。また、陸に棲む多くの動物たちも、同じように眼を守るために、眼をつむる。しかし、水に棲む生き物の中では、陸にルーツを持つ鯨やペンギンなどに限られ、魚類の多くは、そもそも眼を閉じるための瞼(まぶた)を持っていない。そんな中の例外が、サメとエイの一部、そして今回の主役であるフグだった。

フグの閉眼の撮影成功

「目を閉じるモヨウフグ」提供:しものせき水族館「海響館」

フグが眼をつむる謎に迫ろうと、荻本さんらの研究チームは、まず水槽内で飼育しているフグが眼を閉じる瞬間の動画撮影に挑んだ。眼を傷つけないように、砂をかけたり、スポンジで軽く触れてみたり。その結果、眼の近くにお湯を吹きかけて、その瞬間の撮影に成功した。画像を分析した結果、フグは眼の周辺の皮(表皮)をギューっと縮めて眼をつむる。まるで“巾着袋の口を絞る”ようであることが分かった。

ダイナミックな眼の動き

「トラフグ」提供:しものせき水族館「海響館」

研究チームはさらに、目玉(眼球)の動きも調べた。人間でもそうなのだが、哺乳類が眼を閉じる時は、眼球は少しだけ奥に引き込まれる。トラフグの一種「コモンフグ」の眼球を、エコー(超音波画像診断装置)によって撮影した。その結果、フグも眼をつむる時は、眼球も引き込まれ、開くと戻っていた。驚きだったのは引き込まれる割合で、眼球の直径の70%まで奥に引き込まれていた。人間の場合は6%、バンドウイルカが40~60%、そしてジンベエザメが50%というから、フグの眼の動きは実にダイナミックと言えそうだ。

なぜ?フグは眼をつむる

「ハコフグ」提供:しものせき水族館「海響館」

荻本さんは「眼を守るためではないか」と推察する。実際、水族館での観察でも、フグは何らかの刺激を受けた時に眼をつむった。この閉眼行動は、単なる偶然の動きではなく、大切な眼を外からの刺激から守ろうとしているのではないか?との推論だ。また、眼の周囲には“眼をつむるため”の筋肉があることも分かった。フグは、水や空気を吸いこむと、プクーっと体全体を膨らませる。研究チームは、膨らんだ体を元に戻すために働く、体全体を覆う薄い筋肉が眼の周辺で発達し“特殊な筋肉として進化”したと考察する。

研究は“新たな視点”へ

「研究風景」提供:しものせき水族館「海響館」

今回の研究成果は、単に「魚の変わった行動」というのではなく、そもそも脊椎動物が「どのように眼を守るようになったのか」を考える“新たな視点”になると荻本さん。水の中で生きる生き物にとっても、眼は大切な感覚器官であることが明らかになった。研究チームは、数ある魚の中でもなぜフグが眼をつむるのか?を明らかにするため、現在は、同じフグの仲間であるマンボウの閉眼行動を調査している。また、国際学術誌に発表されたことから、魚の研究者だけでなく、医学系や博物館の研究者からも問い合わせがあるそうだ。

「マンボウ」提供:しものせき水族館「海響館」

「エネルギー分野や医療分野のように、直接すぐに人の生活に役立つ研究ではないけれど」と前置きして、荻本さんはこう続けた。

「こうした研究を知った子どもたちが、“生き物って面白いな”“自分も気になったことを調べてみようかな”こう思ってくれれば、それも今回の研究の大切な成果です」。

とても心に残る言葉だった。  

【東西南北論説風(731)  by CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】

<参考資料>
「フグが眼を閉じる機構は膨張行動に関係する筋肉から進化した:その系統学的証拠」
(下関市立しものせき水族館/新江ノ島水族館/一般財団法人 沖縄美ら島財団 総合研究所など)

この記事の画像を見る

オススメ関連コンテンツ

PAGE TOP