育休を取って初めて見えた。男性社員が4か月間の育休で気づいたこと
名古屋市西区に本社を置くインテリア大手「株式会社サンゲツ」(以下、サンゲツ)。中部支社営業課の加藤友章(かとう・ともあき)さんは、第2子の誕生にあわせて、2025年(令和7年)4月から約4か月間の育休を取得しました。
サンゲツは男性育休の推進などに力をいれており、名古屋市の「令和7年度子育て支援企業」で優秀賞を受賞しています。そこで実際に育休を取得した男性社員は、どのように感じたのでしょうか。
「育休中の家事も問題なくこなせるだろうと思っていました」と加藤さんは話します。ところが実際は、想像以上に育児は大変だったといいます。その経験は、復帰後の家族との関係にも変化をもたらしました。
身近な人のリアルな本音を伝え、「今」を生きる人を応援したい——そんな思いからCBCテレビが立ち上げた「me:tone編集部」が、サンゲツの社員に男性育休の取り組みについて話を聞きました。
育休取得のきっかけは、妻からの「強い要望」だった
サンゲツの営業職として働く加藤さんは、第1子のときは1週間、第2子のときには約4か月間の育休を取得しました。
me:tone編集部:「第2子の出産にあわせて、4か月間の育休を取ろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?」
加藤さん:「きっかけは、妻の強い要望でした。上の子がちょうど2歳になるタイミングだったことも大きいです。自我が出てきて、メンタルのケアも必要な時期でした。さらに、1人目も2人目も帝王切開だったので、産後1カ月は安静にする必要があります。これは自分がサポートしないと無理だなと思いました」
一方で、長く休むことへの不安がなかったわけではありません。営業職として担当のお客様を持っていた加藤さんにとって、数か月現場を離れるのは小さな決断ではありませんでした。
熟考の末に「育休を取得したい」と上司に伝えたとき、返ってきた言葉は意外なものだったといいます。
加藤さん:「上司から『自分も当時取れなくて後悔している。ぜひ取ってほしい』と言われたんです。周りの同僚もマイナスなことはまったく言わず、快く受け入れてくれました。育休が取りやすい雰囲気を肌で感じましたね」
「2週間以上の男性育休取得率100%」を推進してきたサンゲツ人事部の積み重ねが、こうした職場の空気として実を結んでいました。
子どもと毎日過ごすことで気づいた、土日では見えない育児の苦労
「一人暮らしも長かったし、炊事洗濯に加えて子どもの世話も、ある程度はこなせるだろうと思っていました」。
そう話す加藤さんが、実際に4か月間の育休を過ごして感じたのは、想像と現実の大きな差でした。

me:tone編集部:「実際に育休を取ってみて、どうでしたか?」
加藤さん:「正直に言って、すごく大変でした。たとえば食事の準備をしようと思っても、2歳の子どもが食べられるものがわからなくて、調べることから始まるんです。調べながら子どもを抱いてやっと作っても、食べてくれないこともあります。この一連の流れを毎日一人でやるのが、こんなにストレスだとは思ってもみませんでした」

土日に家事や育児を手伝う感覚とはまったく違い、計画通りに進まない毎日の連続。そのつらさは、育休を取る前には見えていなかったといいます。
加藤さん:「SNSでよく目にしていた『家事をしても家族に感謝されない』と嘆く女性の気持ちが、ようやくわかりました。僕自身も『認められたいし、感謝されたい』と心底思いましたね」
この経験があったからこそ、育休から復帰したあとの気持ちにも変化が生まれました。妻がしてくれる家事に対して、気づいたときには「ありがとう」と言うようになったといいます。
加藤さん:「妻への感謝の気持ちは格段に増えました。育休の4か月間は、本当にいい経験でした」
温かく送り出す職場への感謝と、わずかに残る罪悪感
育休が取りやすい職場とはいえ、実際に取得するとなると、加藤さんにも不安がありました。営業職として担当顧客を持っていたため、4か月間の空白が業務にどう影響するかが頭から離れなかったといいます。

加藤さん:「職場を離れる不安が強かったので、思い悩んで『育休中も携帯は持っていきます』と申し出ました。そうしたら上司に『何のために育休を取るんだ。携帯は置いていけ』と言われたんです」
その一言や同僚の後押しで、加藤さんは割り切ることができました。職場のサポートのおかげで育休中に仕事の連絡が入ることもなく、育児だけに集中できる時間になりました。
担当顧客への対応は事前にチーム内で分担され、周囲が丁寧にフォローしてくれたおかげで、復帰後もスムーズに業務に戻れたといいます。
一方で、加藤さんは率直な思いも明かしてくれました。
加藤さん:「周りの人が温かく受け入れてくれたのは本当にありがたかったです。でも、自分が抜けた分、誰かの業務が増えたのは確かなので、そこに罪悪感がゼロというわけではありません。引き継いでくれた人たちが、きちんと報われる仕組みがあればいいなと思いました」
「お互いさま」の気持ちで支え合う社風はとてもすばらしいものです。ただ、個人の善意だけに頼り続けるのには限界もあります。だからこそ、支える側の負担にも目を向けた仕組みづくりが、次の課題になるのかもしれません。
加藤さんの言葉は、男性育休をさらに広げていくための次なる問いを示していました。
次回は、社内の制度づくりを担う人事部の小川果林(おがわ・かりん)さんから、制度をつくる立場の意見を伺います。
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