大野雄大投手との不思議な縁、ドラゴンズ球場観戦の度に先発そして好投

球場のスタンド観戦に通っていると、シーズンごとに先発投手との“巡り合わせ”に遭遇する。2024年(令和6年)シーズンは多くは高橋宏斗(※「高」は「はしごだか」)だったが、今季圧倒的に大野雄大。本拠地バンテリンドームへ行く度に、先発マウンドに立っている。(敬称略)
先発マウンドまたも大野

猛暑の名古屋、讀賣ジャイアンツとの3連戦が始まった2025年(令和7年)7月29日、先発は大野雄大だった。筆者は今季9試合目のドーム観戦だったが、大野の先発は何と7度目となる。「観戦する度に大野」という縁を感じながら、3塁側の内野スタンドから、マウンドにゆっくりと歩む背番号「22」を見つめた。今季ここまで、大野の好投ばかりを見てきた。しかしこの日は、ヒット、送りバント、そして死球と重なって、4番のトレイ・キャベッジに3ランホームランを打たれた。初回いきなりの3点にあ然とした。
初回の失点を吹き飛ばした打線

大野はその後、立ち直った。ヒットを何本か積み重ねられての失点よりも、ホームランでの一気の失点の方が割り切れるのだろうか。2回から4回まで、フォアボール1つで巨人打線を抑えていく。一方のドラゴンズ打線は、初回の攻撃で、ジャイアンツ先発の西舘勇陽に3者連続三振を喫して、暗雲が立ち込めた。
しかし大野が0を並べた後の4回裏は、大きなイニングとなった。先頭の1番・岡林勇希がフォアボールで出塁すると、2番の田中幹也もライト前へヒット。そして、3番の上林誠知がレフト線近くへ渋いタイムリーヒットで1点を返す。4番の細川成也は倒れたが、5番のジェイソン・ボスラーの当たりは、応援歌にかき消されることのない快音を残して、ライトスタンドへ飛び込んだ。逆転の3ランに思わず席で立ち上がって拍手した。
大野の投球リズムがいい?

続く5回裏には、岡林の2ランも飛び出した。先制の3失点をひっくり返して余りある打線の奮起だったが、大野はその直後、またしてもキャベッジに、今度は2ランホームランを浴びて1点差に追い上げられた。大野は6イニングを投げて交代した。91球、4安打で5失点、キャベッジひとりにやられた印象だが、交代後の6回裏にも味方打線は2点を取り返している。
ドラゴンズにとって今季ここまで最多となる8得点、打線がこれだけ援護するというのは、やはり大野の投球リズムがいいのからなのかもしれない。大野は6勝目を手に入れた。勝利の瞬間、大型ビジョンに映し出されるベンチ前での大野の笑顔を見るのは、今季もう何度目だろうか。
ノーヒットノーランの予言
少し昔の話を書く。大野との縁についてである。2019年(令和元年9月)、福岡ソフトバンクホークスの千賀滉大(現・ニューヨーク・メッツ)のノーヒットノーラン達成を受けて、歴代ドラゴンズ投手のノーヒットノーラン記録をふり返るコラムを書いた。それまで11回の記録達成だった。
コラムの末尾に「ドラゴンズ12回目のノーヒットノーラン、まもなく実現かもしれない」と書き、そこで候補として「大野雄大」の名前を挙げたのだが、何とその翌日に、大野が阪神タイガース相手にノーヒットノーランをやり遂げてしまった。あまりのタイミングの良さに、本当に嬉しかった。そんなこともあり、大野にはとても思いがある。今季は再び、その思いが本拠地グラウンドで花開いている。
あいみょんの登場曲と共に

大野の登場曲は、あいみょんが歌う『ハルノヒ』である。今季は球場に行く度に聴いている印象だ。「君の強さと僕の弱さを分け合えば、どんな凄いことが起きるかな?」という歌詞が好きだ。大野が最少失点に抑えるゲームもあれば、この日のように、大野が打たれれば打線が奮起するゲームもある。まさに『ハルノヒ』の歌詞のような好ゲームを観戦させてもらっている。プロ通算成績で92勝96敗とまだ4つの負け越しを持つ大野。できることならば、「エース」の称号を持つ投手として、これを早く貯金に切り替えてほしい。(記録は8月4日現在)
今季これで、筆者のバンテリンドーム観戦での成績は7勝2敗となった。大野の好投が大きい。次にチケットを持っているのはお盆のゲーム。その試合はまた、マウンドに背番号「22」が頼もしく立っているのだろうか。真夏の楽しみが続く。
【CBCマガジン専属ライター・北辻利寿】
※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。