東京2020へ駆ける!マラソン界注目のニューヒロイン
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東京2020へ駆ける!マラソン界注目のニューヒロイン

鈴木亜由子・関根花観
2019.03.01

東京2020で4大会ぶりのメダルを狙う日本女子マラソン界に、2人のニューヒロインが誕生した。共に初マラソンにして日本人トップの成績を残した鈴木亜由子選手と関根花観選手。愛知県にゆかりを持ち、日本郵政グループ女子陸上部で切磋琢磨する両選手に、競技に懸ける想いや愛知県での思い出を聞いた。

日本のトラック競技をけん引し、リオデジャネイロオリンピックにも出場した鈴木亜由子選手と関根花観選手。そんな2人が、自国開催のオリンピックを前に大勝負に打って出た。マラソンへの挑戦だ。昨年3月に開催された「名古屋ウィメンズマラソン2018」で関根選手が日本人トップの3位に輝くと、鈴木選手は8月の「北海道マラソン2018」で見事優勝。2人揃って、今年9月15日に開催される東京オリンピックマラソン日本代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」の出場権を掴んだ。

初マラソンで躍動!互いをリスペクトする2人

――初マラソンの感想をお願いします。
鈴木亜由子(以下鈴木) しっかり自分の力を出し切れた結果、優勝という結果がついてきました。目標はMGCの出場権を得ることだったので、それが達成できてホッとしています。
関根花観(以下関根) マラソンはずっと目標だったので、やっと届いたという気持ちですね。ひとつ成長できたと思いますが、優勝ではなかったので、まだまだやることはたくさんあるなと感じました。
鈴木 名古屋ウィメンズマラソンには、チームみんなで応援に行きました。花ちゃんだったら絶対いい成績で帰ってきてくれると思っていたけど、そのとおりの素晴らしい走りで、さすがだなと。練習は嘘をつかないということを花ちゃんから学びました。

――出場した大会を選んだ理由は?
鈴木 当初は名古屋ウィメンズマラソンも選択肢に入れていたのですが、怪我で調整が遅れて北海道マラソンに。唯一夏のマラソンなので、東京オリンピックを見据えて暑さへの適性を見極めるのにちょうどいいと思いました。
関根 私は監督と相談して、です。マラソンは未知の世界だったのですごく緊張しました。名古屋は最後にちょっと上りがあるけれどそんなにきついアップダウンはなく、ペースを刻みやすいコースでした。

――今後はマラソン一本に絞りますか?
鈴木 私はまだトラックも続けるつもりです。マラソンをやったことでトラックに活かせる部分も出てくると思うので。トラックでも上を目指したい気持ちがあります。花ちゃんは満を持してという感じだよね。ずっとマラソンをやりたいって言ってたもんね。
関根 私はトラックはもう一区切りついたかな、と思っています。マラソンに向けてのステップと考えていたので。

――チームメイトとして、お互いの印象をお聞かせください。
鈴木 花ちゃんはチームで一番練習熱心。なんでも規格外なんですよ。
関根 はみ出ていますから(笑)。
鈴木 そう、計り知れない選手。どんなに疲れていても食欲が落ちないし、生活サイクルも独特で彼女だけのパターンがあるんです。朝もいちばん早くて、朝練が始まる前からアップしてるよね。
関根 朝は元々強いですね。
鈴木 私には真似できないし、本当にすごいなと思っています。
関根 鈴木さんの方こそ、誰よりもストイックで、とても真似できません。「今日はいいかな」という素振りをまったく見せないんです。

選手としての原点 愛すべき愛知県の記憶

2人には、愛知県にゆかりがあるという共通点もある。鈴木選手は豊橋市出身で時習館高校、名古屋大学を卒業。東京都出身の関根選手は高校時代の2年間を強豪・豊川高校で過ごした。

――陸上を始めた時期ときっかけは?
鈴木 小学校2年生の時、母の勧めで地元の陸上クラブに入って、一通りいろんな種目をやりました。
関根 私は中学校1年生から。それまでソフトテニスとダンスをやっていて、陸上競技に絞ったのは中学校2年生からです。

――陸上の魅力は何ですか?
鈴木 練習を積み重ねて結果が出た時の達成感ですね。中学時代はバスケもやっていたのですが、高校で陸上一本にしたのはそれが決め手。自己ベストが出た時の嬉しさや高揚感は、陸上でしか得られないものだったので。
関根 私は全然練習していない状態から始めたので、どんどんタイムが縮まっていく快感にハマってしまいました。

――学生時代の思い出は?
鈴木 勉強との両立は大変でしたが、走る時は走る、勉強する時は勉強する、とメリハリをつけられましたし、相乗効果がありました。大学から近い八事日赤の周辺は坂が多いのでよく走りましたね。東山動植物園の「東山一万歩コース」というクロスカントリーのコースも、いい脚づくりになりました。それと豊橋の高師緑地も。花ちゃんは陸上のために豊川に来たんだよね。どんな印象だった?
関根 豊川稲荷があって、観光地みたいで新鮮でした。高校時代は楽しかったけど、陸上を専門的にやるために来たので、「楽しい」の一言では片付けられないかな。覚悟を持ってやっていたから、辛いこともあったけど、その分学ぶことも多かったです。

――愛知県の食べ物で好きなものは?
鈴木 ひつまぶしと味噌煮込みうどんです!あと、地元には「豊橋カレーうどん」という、ご飯ととろろが入ったカレーうどんがあるんです。
関根 それ、高校時代いつもお世話になっていたお店でよく出してもらっていて、私の思い出の味です。すごいボリュームですけど、高校生なのでペロリでした。でも、もっと好きなのはお稲荷さん!お稲荷のハンバーガーとか、いろいろあって。中でも一押しはいなり餅。酢飯の代わりにお餅が入ってて、甘辛いタレを付けて焼くんですが、すごく美味しいんです。

――最後に今年の目標や意気込みをお聞かせください。
鈴木 MGCに向け、しっかり段階を踏んで力を付けていきたいです。東京オリンピックに繋がる1年にしたいですね。
関根 オリンピックにマラソンで出ることをずっと夢見ていたので、まずはMGCで出場権を掴み、さらに高みを目指すために練習を積んでいけたらと思います。

鈴木選手と関根選手は1期生!「日本郵政グループ女子陸上部」

2014年4月創部。日本郵政グループ創業以来初となる実業団チーム。2016年には創部から僅か3年で全日本実業団対抗女子駅伝(クイーンズ駅伝)を制すなど、駅伝やトラック競技、マラソンで数々の実績を残している。高橋尚子さんや有森裕子さんを指導した経験を持つ髙橋昌彦監督の下、東京都小金井市を拠点に活動。駅伝メンバーで強化合宿を行うほか、鈴木選手の北海道マラソンや関根選手の名古屋ウィメンズマラソンなど、仲間が出場する大会にはチームみんなで応援に駆けつけることも。鈴木選手は、「それぞれ個性があって、お互い刺激し合い、切磋琢磨しながら上を目指せるチーム」と語る。

Ayuko Suzuki

鈴木亜由子
1991年生まれ。愛知県豊橋市出身。中学時代から全国大会を制し、ジュニア女子陸上界に名を馳せる。時習館高校から名古屋大学を経て、2014年に日本郵政入社。リオデジャネイロオリンピック5,000m代表。「自分の原点」と話す愛知県市町村対抗駅伝競走大会には中学時代から豊橋市代表として出場し、出場した5回全てで区間賞を獲得。今年1月の皇后盃 第37回全国女子駅伝では愛知県のアンカーを務め、チームを3年ぶり2回目の優勝に導く。マラソン初挑戦となった北海道マラソン2018では2位の選手に2分以上の差をつけて優勝した。さらに、今年2月の香川丸亀国際ハーフマラソンにおいても日本歴代3位の好タイムで日本人トップの2位に入り、高い適性を示した。

Hanami Sekine

関根花観
1996年生まれ。東京都町田市出身。豊川高校卒業後、2014年に日本郵政入社。同年、アジアジュニア選手権3,000mで銀メダル獲得。リオデジャネイロオリンピック10,000m代表。名古屋ウィメンズマラソン2018では、初マラソン歴代4位となる好記録で、日本人トップとなる総合3位でゴール。夢の大舞台に立つためにスピード強化や暑さへの対応など、さらなる進化を求めて練習に励んでいる。

取材・文=福和すみえ
撮影=相澤裕明
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