愛知から始まる女子プロ野球新世紀
Column
aispo!web連動企画

愛知から始まる女子プロ野球新世紀

里 綾実・寺部歩美
2018.06.15

今年、愛知に女子プロ野球チームが誕生したことをご存じだろうか?
チーム名は「愛知ディオーネ」。兵庫から移転し、さらなる飛躍を目指している。
そんなチームを『aispo!』とCBCテレビ『スポーツLIVE High FIVE!!』の連動企画として、 CBCテレビ・若狭敬一アナウンサーが取材した。

※平成30年6月15日発行のaispo!記事を再掲しています。

今回紹介する愛知ディオーネは、今シーズンより本拠地を兵庫県淡路市から愛知県一宮市に移転。新たなスタートを切った。

男子顔負けのハードな練習メニュー

CBCテレビ『スポーツLIVE High FIVE!!』の若狭アナが訪れたのは、一宮市内にある練習グラウンド。平日の8時前だというのに、選手たちの元気な声が響いていた。この日は休日明けということもあり、体力づくり中心のメニュー。まず始まったのは、なんとサッカー。大小2つのボールを使って動きを複雑にすることで、コミュニケーション能力や判断力の向上、そして視野を広げる効果があるという。20分ほど真剣にボールを追いかけた後、短距離の往復を繰り返すシャトルランや、左右交互に打ち分けられるゴロを走って捕球するアメリカンノックなどでさらに追い込んでいく。

今も草野球チームのエースとしてマウンドに立つなど、野球好きで知られる若狭アナは、練習の様子をつぶさに見学。そのレベルの高さに感心しつつ、次のように語った。「アメリカンノックは、中日ドラゴンズのキャンプでも行われるメニュー。男子プロでも音を上げるような厳しい練習ですが、皆さんしっかりついていっています。何より、みんなで声をかけあい明るく元気にやっているのが良いですね」。

汗と土にまみれながらも「まつ毛長いよ!」など、思わず笑ってしまう野次が飛び交う。

若狭アナは、今シーズンからヘッドコーチに就任している元中日ドラゴンズの森章剛さんにも声をかけた。

若狭「ディオーネの選手たちについて、どう感じていますか」
「課題はメンタル面ですね。プロ野球選手としての心構えがしっかりできてくれば、自ずと技術も上がってくると思います」

日本を代表する絶対的エースの里綾実

そんなチームの中でひときわ存在感を放っていたのが、里綾実投手だ。チームはもちろん、日本代表でもエースに君臨する絶対的な存在。若狭アナは、練習後の彼女に直撃インタビューを試みた。

若狭「愛知に移転してこれまでと変わったことはありますか?」
「野球が盛んな地域なので、目の肥えた観客が多いです。私たちのことも熱く応援してくれるので、その期待にプレーで応えたいと思っています」
若狭「8月に開催されるW杯のメンバーにも選ばれましたね」
「ぜひとも6連覇を勝ち取って、『日本の女子野球ここにあり』というところを世界中の野球ファンにアピールします!」

地元出身の期待の星 寺部歩美

里投手とともに若狭アナが注目したのが、チームの中で数少ない地元愛知出身の寺部歩美捕手。強肩強打が持ち味で、15年の最優秀新人賞、16年のゴールデングラブ賞など、数々のタイトルを獲得している。

若狭「地元でのプレーはいかがですか?」
寺部「野球を続けるために埼玉の高校に入りました。まさかプロになって地元に帰って来られると思っていなかったので、なんだか不思議な気持ちです。ここで女子プロ野球を盛り上げて、女の子が当たり前に野球ができる環境を作れたらいいなと思います」
若狭「家族や友人も喜んでいるのでは?」
寺部「地元の友人がたくさん見に来てくれるのが、なによりうれしいです。やっぱり気合いが入りますね」
若狭「最後に今シーズンの意気込みを」
寺部「投手のリードはもちろん、5番を任されているので打撃でもチームに貢献して、ぜひ年間女王の座を勝ち取りたいと思います」

最後は寺部捕手相手にピッチングまで披露した若狭アナ。すっかりディオーネの魅力に取り憑かれた様子で、今日の取材を総括した。「決して恵まれていない環境の中、大好きな野球にひたむきに取り組む彼女たちを見て、もっともっと応援したくなりました。地元に愛知ディオーネというチームがあることを、ひとりでも多くの人に知ってもらえるお手伝いができるといいなと思います」。

愛知ディオーネ、京都フローラ、埼玉アストライアの3チームで争うリーグ戦(ヴィクトリアシリーズ)は9月まで続き、年間チャンピオンを決める女王決定戦は10月に開催。ナゴヤドームや一宮市営球場など、地元・愛知でも数試合が予定されている。ぜひ一度球場に足を運んでみてはいかがだろう。男子のプロ野球とはまた違った面白さを感じることができるはずだ。

Ayami Sato

里 綾実
さと あやみ。1989年生まれ、鹿児島県出身。小学3年生で野球を始める。神村学園高等部、尚美学園大学と女子野球の名門校でのプレーを経て、2013年にレイアに入団。15年よりディオーネでプレー。MAX125kmの速球が持ち味の日本を代表する右腕投手。MVPをはじめ、タイトルも多数。

Ayumi Terabe

寺部歩美
てらべ あゆみ。1992年生まれ、愛知県豊川市出身。小学生の時、父が監督を務めていた少年野球チームに入団し野球を始める。花咲徳栄高校、尚美学園大学を経て2015年にディオーネへ入団し、最優秀新人賞に輝く活躍を見せた。強肩強打の捕手として、チームになくてはならない存在。

Keiichi Wakasa

若狭敬一
わかさ けいいち。1975年生まれ、岡山県倉敷市出身。名古屋大学卒業後、98年に入社。軽妙な語り口で一躍人気アナウンサーとなり、バラエティ番組の司会からスポーツ実況まで幅広く活躍。『スポーツLIVE High FIVE!!』をはじめ、テレビ・ラジオのレギュラー番組を多数持っている。 CBCラジオ『若狭敬一のスポ音』は毎週土曜日12:20~放送。

取材・文=鶴哲聡
撮影=松本幸治
aispo!電子書籍版はこちら。

女子プロ野球の基礎知識

愛知ディオーネ

「地域に愛され、地域と共に、地域とつながる球団」を理念に掲げる。チーム名はギリシア神話に登場する「空の女神」の意。
jwbl.jp/dione

2018年 第8回 WBSC女子野球ワールドカップ

2018年8月22日~8月31日、各国代表女子選手による野球の国際大会がアメリカ(フロリダ)で開催される。侍ジャパン女子代表の選手たちは、世界の舞台で大会6連覇を目指す。
愛知ディオーネからの出場選手
里 綾実(投手) / 中田 友実(外野手)

JWBL(日本女子プロ野球機構)
野球女子の夢を応援

  • 愛知ディオーネ(愛知県一宮市)
  • 京都フローラ(京都府京都市)
  • 埼玉アストライア(埼玉県さいたま市)
  • レイア(京都府城陽市)

日本女子プロ野球リーグが誕生したのは今から9年前のこと。女子野球選手たちにも野球に専念し、生活できる場を創りたいとの想いから創設された。ひたむきに野球に取り組む姿が話題を呼び、少しずつ認知度もアップ。現在は、愛知ディオーネ、京都フローラ、埼玉アストライア、そして若手主体の育成チーム、レイアの4チームで構成されている。

ここが違う!女子プロ野球

イニングの回数
女子プロ野球は7イニング制。延長は9イニングまで。
使用するバット
女子プロ野球も、男子と同じ規格の球場で試合を行う。ホームランなどの長打を出やすくするため、金属製バットを使用する。
ファンとの距離が近い
女子プロ野球の大きな魅力の一つは、ファンとの距離感。選手が主催するボウリング大会など、プロ選手たちと身近に触れ合えるチャンスが多い。

注目企画! 美女9総選挙!

日本女子プロ野球の公式Twitter企画「女子プロ野球美女9総選挙」。ファンたちによる投票で、女子プロ野球界の美女9を決める。愛知ディオーネからは、只埜榛奈(ただのはるな)選手(背番号15番)が選ばれた。
jwbl.jp/news/detail/id/6780

美女9総選挙

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