ディフェンディングチャンピオンとして、浅地洋佑(あさぢ・ようすけ)が再び和合の地へ帰ってくる。昨年、日本最古の民間トーナメント「中日クラウンズ」で、4年ぶりのツアー優勝を飾った。ウィニングパットを沈め、王者の頬を伝った涙は記憶に新しい。どん底のスランプから抜け出し、劇的な勝利を掴んだあの場所で、今度は「追われる立場」として連覇という歴史的難関に挑む。浅地洋佑選手(C)CBCテレビ出口の見えないトンネルから「技の復活」へ高校在学中にプロ転向し、順調にキャリアを重ねていた浅地だったが、4年前、突如としてプレーに異変が生じた。「大スランプというか、もう本当に球がまっすぐ飛ばないとか、そういう状況に陥りながら、何とかごまかしてやってきた」。目の前のことしか考えられず、将来のビジョンも描けない日々。シード権を失った彼を救ったのは、幼少期にゴルフのいろはを教わった植村コーチだった。浅地洋佑選手(C)CBCテレビ藁にもすがる思いで教えを請うと、崩れていたスイングの一から見直しを図った。特殊な器具も導入し、パターからドライバーまですべての安定性が劇的に向上。「これやってたら絶対大丈夫だよ」とコーチに背中を押されることで、勝手にメンタルの状態も良くなっていったという。4年間の苦悩を「寄り道は無駄じゃなかった」と笑って振り返れるのも、確かな技術を取り戻せたからこそだ。パワーゲームを制する、和合に特化したマネジメントそして迎えた昨年の最終日、最終組。共に回ったのは、勢いのある若手の小西たかのりと岡田晃平だった。現代のゴルフ界は飛距離で圧倒する「飛ばし屋」が注目されがちだが、浅地は精緻なショットと熟練のショートゲームという「技巧派」の凄みで対抗した。舞台となる名古屋ゴルフ倶楽部和合コースは、距離こそ短いが罠だらけの日本屈指の難関だ。一瞬の油断が命取りとなるこのコースで、浅地の戦略が光ったのが15番ホールである。同組の岡田がティーショットを曲げ、林の中からの2打目も木の枝に当てるトラブルに見舞われる。一方の浅地もセカンドショットをミスするが、ここで驚くべき冷静さを見せる。「その週バンカーがものすごく調子良かったんで、バンカー入れたらパーとれるだろうと思ってバンカー狙ってましたね」。あえてバンカーに入れ、そこから見事に寄せてパーを拾い、ついに単独トップに躍り出たのである。浅地洋佑選手(C)CBCテレビ「諦めを覚える」という最強の心の持ちようなぜ浅地はこれほどまでに和合を得意とするのか。その答えは、彼独自の「心の持ちよう」にある。プロ入り当初は下位に沈むことも多かったが、成績が上向いたきっかけを「ちょっと諦めを覚えたら良くなりましたね」と語る。「昔だったら100ヤードだったらもう絶対ピンでしょみたいなところがあったんですけど、奥でいいやとか、手前でいいやとか、思えるようになったのが攻略できるようになったきっかけじゃないですかね」。浅地洋佑選手(C)CBCテレビ無理にピンを狙わない。攻めるところはしっかり攻め、守るところはしっかり守る。このメリハリこそが、和合に愛されるプレースタイルなのだ。昨年の最終日も、極力ストレスをかけずにプレーすることを心がけ、18番でボギーを叩いても「かっこ悪いんですけど勝てばOKです」と笑い飛ばす余裕があった。偉業の先に見据える、再びの王冠中日クラウンズでの連覇は、ジャンボ尾崎などごく限られたレジェンドしか達成していない歴史的快挙だ。その高い壁に挑む浅地だが、その闘志は静かで、しっかりと地に足がついている。「もちろん目指すところは連覇ですけど、まずはしっかり4日間を戦い抜くっていうところが大事になってくるんじゃないかなって思います。ディフェンディングチャンピオンがいない週末は寂しいと思うんで、しっかり週末まで残るっていうのが一番大事かなと思いますね」。大会史上数人しか成し遂げていない連覇。その偉業の先に、再び王冠(クラウン)を掲げる浅地洋佑の姿が見える。