自民党が圧勝した今回の総選挙は、過去にないほどネットの情報が参考にされた選挙でした。しかしその裏側には、誤った情報やフェイク動画が溢れていました。その実態とは。中道改革連合の結党発表の動画。しかし、党のマークは赤色。本物はもちろん青です。そしてマークも、中国の国旗のようになっています。中指を立てて不適切なポーズをとる候補者。さらに現職の大臣が「外国人の生活保護終了」と発言している書き込みも。これらはすべて生成AIで作られた「フェイク」。今回の総選挙公示後、次々にネット上に登場したものです。完全なウソですが、それでも200万~300万回を超える再生回数を記録したものも。ネットにあふれる“ウソ”東京にある「日本ファクトチェックセンター」。ネット上に広がる偽情報や誤情報を検証・発信している非営利団体です。(日本ファクトチェックセンター古田大輔編集長)「そもそも、このような団体は存在しないし、このロゴも後付けで作られたものだと分かった」中道改革連合のフェイク画像をウソと断定したポイントは、日付です。新党がロゴを発表したのは1月16日。(古田編集長)「(発表後の)1月16日以降にフェイクのロゴがネット上にどれだけあるかを調べるとネット上に出てくる」“中革連”という組織発表前は1つもヒットせず…中国にある「中革連」という団体と関係があるかのように思わせる表現ですが…(古田編集長)「(発表前の)1月15日以前で、このロゴに似た画像がネット上にあるかを調べてみます。もし“中革連”という組織が実在して、このロゴが広く使われていれば(ロゴが)出てくるはず。でも出てこない」中国に“中革連”という公的な団体は存在しないと判断し、これもウソと断定しました。中道もロゴの不正改編や虚偽投稿に対し、法的対応を行うとホームページで発表しました。真冬の選挙戦なのに…タンクトップ姿で街頭に立つ“フェイク”画像そして、真冬の金沢でタンクトップ姿で街頭に立つ候補者の写真も。(古田編集長)「まずは違和感がありますよね。政治家が街頭で雪の中でタンクトップで支援を求めることは考えにくい。この画像が怪しいと思い調べると元画像がすぐ見つかる。これ背景とか手の角度も一緒」ファクトチェックセンターでは、1月27日の公示以降、選挙や政治関連で27件のフェイクや誤った情報発信を指摘していました。その中には、円安で自殺が減り、円高で自殺が増えるという「誤情報」。高市総理支持を強く訴える女性の姿は、生成AIによる「フェイク画像」。小野田経済安保大臣が「外国人政策は日本経済の礎」と発言したという「偽情報」も。選挙中に相次いでいた偽情報の発信。民間の調査会社によると、今回の衆院選関連のYouTube動画の視聴回数は、実に24億回あまりに達しました。その半分近くが自民党という結果に。別の調査だと、2024年の衆院選は2億7000万回で、ネットで選挙情報に触れる人々が10倍以上に増えている実態も浮かび上がります。衝撃のベテラン落選 その裏側にもフェイクが…?!東海地方の野党にとって衝撃の結果だった、三重3区の中道改革連合・岡田克也氏の落選。岡田氏については、選挙中「中国のスパイ」など事実無根の情報がSNSで拡散していました。さらに、テレビ番組での発言を切り取ったフェイク動画も。(岡田克也氏)「いっぱい色んなことを書かれています。そのような悪い評判を投げつけるのは私は本当に残念だ」落選が決まった後、岡田氏からはこんな言葉も。(岡田氏)「ネットを見ている人の支持が非常に低かったという報道もありましたけど、相当色んなデマや批判が渦巻いていましたので、それに十分対応することができなかった」肉眼で見分けがつかないフェイクも… 選挙の結果に影響を与えかねない、偽情報に誤情報。こうした中、AIでフェイクを見抜く技術が研究されています。東京の国立情報学研究所が開発したのは、フェイク映像検知システム「シンセテック・ビジョン」。(国立情報学研究所越前功博士)「我々のモデルは、大量のリアルの顔・大量のフェイクの顔を集めてモデルに学習させて、リアルかフェイクかを判定させている」「本物」と「AIによる偽物」。肉眼で見分けることはほぼ不可能ですが…(越前博士)「右側のフェイクの部分をよく見ると、ひげの部分が下を向いた時に一瞬消える」口元のひげが、わずか0.13秒だけ消える。AIによるフェイクをAIが見破る時代にこのシステムは、リアルな動画とフェイク動画の両方を大量にAIに学習させ、本物かフェイクかを判別するものです。このシステム、すでにタレントなどの肖像権を守るサービスで導入が始まっています。(越前博士)「ちゃんとしたものを流してもAIだと言われるし、AIで面白おかしく作ったものを流しても面白いから拡散する。SNSをそればかりを使って投票先を選ぶ行動は危ないと思う」人間の判断を惑わせるAIによるフェイクを、AIで見破る。そんな時代も来ようとしていますが、どこまで行っても最後は人間の正しい判断が必要であることは、言うまでもありません。CBCテレビ「newsX」2026年2月10日放送より