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仕事も子どもも諦めない。“卵子凍結”という新しい選択肢

仕事も子どもも諦めない。“卵子凍結”という新しい選択肢
CBCテレビ me:tone編集部

ロールモデルではなく、身近な「隣の女性」が持つリアルな本音を取材することで、「今」を生きる女性たちを応援したい――。 そんな思いから、CBCテレビは「me:tone編集部」を立ち上げました。     
    
今回のテーマは、近年、女性タレントやアスリートのSNS発信をきっかけに注目が高まっている“卵子凍結”。妊娠・出産のタイミングを自分で選び、キャリアと両立させたいと考える女性にとって、いまや大切な選択肢の一つになりつつあります。一方で、正しい知識や実際の体験談に触れる機会はまだ限られているのが現状です。

今回は、名古屋市池下の「まるたARTクリニック」で開催された対談セミナーを取材。登壇したのは、同院の丸田院長と、卵子凍結を経て妊娠・出産を実現した女性です。
「卵子の質と年齢」「時代背景から見る卵子凍結の必要性」「高額な費用と助成金の現実」など、医学的な観点から語られる日本の課題や、当事者のリアルな本音まで語られました。
(取材・報告;me:tone編集部 小島)

卵子凍結セミナーの様子

妊娠の可能性を高めるカギは“どれだけ若い卵子を何個残せるか”

丸田医師:「若い卵子を1個や2個凍結しただけでは、妊娠できる可能性を少し残せただけに過ぎない。30代半ばなら、少なくとも20個ほど凍結しておくことで、ある程度の確率をもって妊娠を期待できる。」

卵子凍結を選択する多くの人は、いま妊娠する環境がないけれど、将来の選択肢を残しておきたいと考える人たちがほとんど。その9割以上が未婚で、仕事と向き合いながら将来を見据えている人が多いそうです。

卵子の質という点では、35歳を超えると、1年ごとに卵子の質が低下し、妊娠の可能性も下がっていきます。同時に、流産のリスクも上昇。つまり、35歳は「妊娠しにくく、流産しやすくなる」分岐点でもあるのです。

まるたARTクリニック提供:卵子凍結セミナー資料

日本で卵子凍結をしている女性のうち、30代が約9割。その中でも36~39歳が全体の6割を占めています。また、凍結している卵子の数が10個未満という人が半数以上にのぼるのが現状です。

「日本人は、海外の先進国と比較すると基礎知識がまだ十分とは言えません」と丸田医師は指摘します。実際、自分の年齢と凍結卵子の数によって、将来の妊娠率はある程度予測できます。

たとえば、34歳で10個の卵子を凍結すれば約75%、20個なら約91%の確率で妊娠・出産に至るというデータもあります。このため、卵子凍結を希望する患者には年齢を考慮したうえで「どれくらいの数を目標にするか」を一緒に検討することが大切だといいます。「卵子凍結をするからには、将来の妊娠が現実的に期待できるだけの個数を確保するべきです」と丸田医師は強調します。

まるたARTクリニック提供:卵子凍結セミナー資料

最近の調査では、「赤ちゃんを欲しいとは思わない」と答える人が、女性の約5割、男性で約6割にのぼるそうです。結婚や出産を“人生のゴール”と考える価値観は、少しずつ変わりつつあります。それでも「今は考えていないけれど、将来妊娠の可能性を残しておきたい」と考える人は4人に1人ほどいるといいます。

丸太医師:「産みたいときに産んで、産みたくない時は産まない。当たり前のようでいて、それを実現するのは簡単ではありません。女性が自分の意思で“妊娠のタイミング”を選び取れるようにすること。それこそが“卵子凍結”という選択の意味ともいえるのではないでしょうか」

若いときの卵子を凍結し、将来“その時”がきたら使う。凍結した卵子は長期間、同じクオリティのまま保存できることが分かっています。そして、凍結卵子から生まれた子どもも、自然妊娠の子どもと何ら変わりはなく、安全性も確立されています。

卵子凍結セミナーの様子

東京都が「卵子凍結」に助成金を導入、名古屋ではどうなる?

2023年、東京都が卵子凍結への助成金制度を開始したニュースは、多くの医療関係者に衝撃を与えました。これをきっかけに、東京では働く女性たちが一気に関心を高め、学び始めているといいます。

一方で、卵子凍結には50万~100万ほどの費用がかかるのが一般的。

丸田医師:「60万払っても妊娠の可能性を残したいと思うか、それとも“今はまだ必要ない”と考えるか。その判断は人それぞれです」

また、治療にはスケジュール的な負担も伴います。生理開始から約2週間後で卵子を採取するため、月に3~4回の通院が必要になることも。ただ、仕事との両立を考慮した柔軟なスケジューリングも可能だそうです。

名古屋ではまだ助成制度が整っていないものの、将来に備えて行動を始める女性は少なくありません。中には、母親が娘と一緒に相談に訪れるケースも増えているといいます。世代を超えて、“選択肢を持つ”という考え方が広がり始めています。

まるたARTクリニック提供:卵子凍結の様子

卵子凍結にしても不妊治療にしても、皆さんに正しい知識を深めて頂きたいという思いで、まるたARTクリニックでは、今回のセミナーを開催。卵子凍結や不妊治療に関して、正しい知識を広めることを目的としています。

現時点では、名古屋では助成金もなく、費用も時間もかかるかもしれませんが、まずは専門家に相談してみてください。けっして一人で悩まないでください。今回のセミナーを取材して、改めて強く感じました。

※まるたARTクリニックで採卵した凍結卵子については、原則グレイスバンク(卵子凍結保管サービス)でのお預かりになります。

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