竜のドラフト1位・仲地礼亜投手の躍動に、春の沖縄は大いに沸いた!

竜のドラフト1位・仲地礼亜投手の躍動に、春の沖縄は大いに沸いた!

春を迎えた沖縄には、この時季特有の強風が吹く。しかしそんな風も昼前には収まって、今度は2月とは思えない強い日差しがアグレスタジアム北谷の球場に降り注いだ。そんな中、「ピッチャー・仲地」という場内アナウンスが流れた瞬間、スタンドは「おー」というどよめきと共に、大きな拍手に包まれた。中日ドラゴンズのドラフト1位指名、沖縄県出身、仲地礼亜投手のデビュー戦である。投球練習の1球ごとに拍手が起きる。何とも珍しい光景だ。

ドラゴンズブルーの縁(えにし)

「サンデードラゴンズ」より仲地礼亜投手©CBCテレビ

仲地投手は、沖縄県の読谷村出身である。読谷といえば、1997年(平成9年)からドラゴンズの2軍が春季キャンプを行っている縁深いところである。中学時代には、少年野球の北谷ボーイズに所属した。

北谷といえば、これもドラゴンズ1軍のキャンプ地である。沖縄大学に進んだ仲地投手は、150キロを超える速球に、カーブ、スライダー、そしてツーシームなど多彩な変化球によって、主力投手としての道を歩む。

2022年ドラフト会議で、そんな“ドラゴンズブルーの糸”を手繰り寄せるように、立浪ドラゴンズは1位で単独指名した。沖縄県内の大学生がドラフトで指名されたのは、史上初めてのことだった。背番号は「31」。ドラゴンズの一員として“凱旋”の春季キャンプとなった。

ところどころに激励の声

北谷町役場©CBCテレビ

2023年2月、プロ野球の各チームがキャンプを行う沖縄では、仲地投手にエールを送る看板があちこちで目についた。「ちばりょー仲地投手」「仲地投手ちむどんどん」。出身地の読谷町役場には「羽ばたけ!ゆんたくざの鳳ごとく!」と書かれた勇壮な言葉もある。北谷町役場にも館内正面に「北谷ボーイズ出身」と書かれた大きな激励の垂れ幕があった。

タクシーに乗って「ドラゴンズ」と言うと、運転手さんとは必ず仲地投手の話題になる。「がんばってほしいね~」「ドラフト指名の時は新聞も1面さ~」「仲地、あれは本物だよ」。皆それぞれが、嬉しそうに仲地投手を語る。その言葉は雄弁だ。心からの熱い応援がそこにある。

沖縄キャンプで地元デビュー

「サンデードラゴンズ」より仲地礼亜投手©CBCテレビ

キャンプの最初は、2軍でのスタートだった。「無理をさせない」という立浪和義監督の方針だった。2月15日に行われた沖縄電力との2軍練習試合に先発として実戦デビューすると、1イニングを三者凡退の無失点に抑えた。くしくもこの日は、22歳の誕生日。生まれ故郷での好投によって、すぐに1軍への昇格が決まった。

北谷のブルペンで投球を目の当たりにしたが、実にきれいに整った投球フォームという印象。右腕から繰り出されるボールは力強かった。

立浪監督は、キャンプ打ち上げ直前のオープン戦、2月26日に北谷で行われた広島東洋カープとのゲームに、仲地投手を先発させた。地元への粋な配慮とも思えたが、それ以上に、実は仲地投手が自らの力で勝ち取ったものだと分かるのは、プレーボール直後のことだった。

先発での見事なピッチング

仲地礼亜投手©CBCテレビ

先頭打者としていきなり迎えたのは、メジャーから日本球界に復帰した秋山翔吾選手。無難にファーストゴロに抑えると、続く2番の巧打者・野間峻祥選手を3球三振に取る。そして、3番は昨シーズン4番も打ったライアン・マクブルーム選手。センターフライに打ち取って、三者凡退という堂々の立ち上がりを見せた。

駆け足でベンチに戻る仲地投手に、1塁側ドラゴンズのスタンドからだけでなく、3塁側スタンドからも大きな拍手が送られた。続く2回表に、4番の西川龍馬選手を空振り三振に仕留めた瞬間、ドラゴンズに、また新たな先発投手が誕生する予感が、期待から確信へと変わった。仲地投手はその回も無失点に抑えて、予定されたイニングを投げ切った。「思った以上に素晴らしい投球をしてくれた」立浪監督の顔も思わずほころんでいた。

ちばりょー(頑張れ)沖縄の星

「サンデードラゴンズ」より仲地礼亜投手©CBCテレビ

ドラゴンズの沖縄出身選手というと、まず上原晃さんが浮かぶ。沖縄水産高校から明治大学への進学希望だったが、当時の星野仙一監督がドラフト3位で強行指名して入団。デビュー年の1988年(昭和63年)には、いきなり中継ぎとして活躍し、その年のリーグ優勝に貢献した。

もうひとり、浦添市出身の又吉克樹投手は、独立リーグから2013年(平成25年)に入団すると、開幕1軍に抜擢されて、1年目から9勝、24ホールドという好成績で、強力な投手陣の一角を担った。FAによって福岡ソフトバンクホークスへ移籍したが、飄々とした投げっぷりからも、ドラゴンズファンにとって、記憶に残る選手である。そして、その系譜に「仲地礼亜」というルーキー投手が加わった春となった。

竜のキャンプ地である北谷町でも読谷村でも、長らく優勝から遠ざかっているドラゴンズが、ペナントを手にして“帰って”くることを切望している。“沖縄の星”仲地礼亜投手が開幕ローテーション入りを果たせば、ドラフト1位指名では、エースとして活躍した川上憲伸さん以来、実に25年ぶりとなる。そんな楽しい夢を膨らませながら、竜党にとっては、近づく開幕を待つ日々が続く。                                   
                             
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に最新刊『屈辱と萌芽 立浪和義の143試合』(東京ニュース通信社刊)『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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