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見えてきた正捕手ーライバルにも笑顔で拍手を送る、ドラゴンズ木下拓哉の器

見えてきた正捕手ーライバルにも笑顔で拍手を送る、ドラゴンズ木下拓哉の器
アナウンサーコラム

見えてきた正捕手ーライバルにも笑顔で拍手を送る、ドラゴンズ木下拓哉の器

 2020年12月9日(水) 10:30
宮部 和裕
宮部 和裕
木下拓哉捕手

「その手が、あったのか!」

ドラゴンズは今年7月、キューバ出身で来日3年目、育成選手からのたたき上げであるアリエル・マルティネス捕手を支配下登録し、即一軍に抜擢した。アリエルはスタメンマスク起用に応え、打って守っての活躍で、お立ち台に上がった。
ドラゴンズファンも、長きに渡って懸案だったドラゴンズの捕手問題に新しい風を感じたであろう。

長年の課題、ドラゴンズ正捕手問題。昨年チーム最多スタメンマスクで、今季開幕戦をリードした加藤、膝のケガからの復活を期す桂、昨年高卒デビューでいきなり初ヒットを放った石橋、FA加入のベテラン大野奨太。そして今季は、慶応出身のルーキー郡司が、沖縄キャンプから高い評価を受けていた。

そんな中、トヨタ自動車から入団5年目の木下拓哉は、開幕2試合目からスタメンマスクを任され始めた矢先の、外国出身捕手の鮮烈デビューだったのだ。

キャッチャーらしい配慮

先週12月2日放送のCBCラジオ「ドラ魂キング」で、スタジオにお招きした木下捕手に、私、宮部が最も聞きたかったのはここだ。

「アリエルが活躍した直後、ベンチで自分のこと以上に盛り上げているキノタク(木下拓哉)さんの姿が、忘れられない。複雑な気持ちではなかったのですか?」

その日だけじゃない。ルーキー捕手のプロ初ヒットのも、ベンチで手をたたき、笑顔で迎え入れていた。ソーシャルディスタンスの中でできる、ありったけの拍手で。

木下捕手は、こう答えてくれた。

「あれが、あの時に、ボクができるチームでの役割ですから」

木下捕手は続けた。もちろん盛り上げているだけではないと。ただ見ているのではなく、自分がマスクをかぶったらどうしていたか。アリエルが初めて一軍に来た時も、声を掛けて、試合前のチームの所作も教えた。やがてそれが、自分の好結果にも繋がると。だから、チームが勝てばなんでもいい!というのは本音だと。

まさにキャッチャーらしい配慮と器の大きさは、大野雄大投手との名コンビ誕生に繋がっていく。沢村賞を受賞した大野投手の今季における勝ち星全てを共にし、最優秀バッテリー賞に輝く。

大野投手から学んだこと

「サンデードラゴンズ」より木下拓哉捕手©CBCテレビ

その象徴が、7月31日ナゴヤドームでのスワローズ戦。大野投手は開幕戦の舞台から一か月以上勝てず、7度目の先発でつかんだ今季初白星。見事な完投劇を支えた。

「試合に出ない日もしっかりと準備ができたので、刺すことができました」

と木下捕手は語る。まさにその準備が、この日、二度も相手の盗塁を刺すというアシストになった。しかも、エスコバーの盗塁を刺したシーンは、昨年まで大野投手があれほどまで課題としていた試合序盤の被本塁打の直後、尾を引きがちなところを阻んだ。これが木下捕手自身の12球団最高盗塁阻止率.455にも繋がっていった。

木下捕手は、自分の貢献よりも、大野投手から学んだことを教えてくれた。

「絶対本人は完投を意識して投げているはずなのに、初回から9回まで、力を抜いてるなというイニングが無いんです。抜くこと覚えると、下位打線に打たれる…っていうリスクを分かってるなと感じていました」

まさにその時、以前に今中慎二さんが、語っていた言葉が重なった。

「(大野)雄大とのバッテリー経験を若い投手との時に活かせよ」

木下捕手自身にそれをぶつけてみた。

「そうなんです。大野さんと他のピッチャーとは持ち球も違いますが、今年の大野さんは、ストライクゾーンで勝負できたんです!若い投手は、慎重になりすぎて、四球が増えてしまう。でも、四球を簡単に出さないよう、真ん中でいいから来いよ!では、本塁打を打たれ過ぎてしまう。チームで四球を減らせても、被本塁打が増えてはいけない。そのバランスを常にボクが、考えないと」

さらには、こんな生放送でのこぼれ話も披露。

「例えば、6本も本塁打を許したオースティン。リーチが長いのにベースの近くに立つ。外角はバットが届くし、内角も詰まらない。選球眼もいい。でも、シーズン終盤、少し対策できました。内にも外にも偏れない!ということまでは喋れますかね」

大先輩、吉見投手への思い

そして、バッテリーといえば、トヨタ自動車時代からの大先輩、吉見一起投手の引退登板。吉見自身、「木下がいいリードをしてくれた」と、感動のスピーチの後、言葉を残した。

スタジオで木下捕手が、こんな秘話を明かしてくれた。

「実はあの日、ボクはスタメンマスク予定ではなかったのですが、前日に無理を言って、吉見さんのラスト、受けさせて下さいとお願いしたのです。とにかく、ボクが受けたかった。現に吉見さんと一緒に、ワンアウトで下がってますでしょ。皆はラストボールとなった4球目の外角低めのストレートに吉見さんの神髄を見たっていいますけど、ボクは、その直前の2球目の“外スラ”です。完全に、ボク自身があのボールを受けたくて。ああ、これイイなあって、嬉しかった」

ようやく見えてきた、ドラゴンズの正捕手候補。
以前、牛島和彦さんが言っていた言葉を思い出す。

「キャッチャーは変えずに、継続することが大事。マスクをかぶり続けることが経験値になる」

そしてつながる、今中さんの言葉。吉見、大野ら大投手とのバッテリー経験を木下捕手自身が、チーム全体に活かせてこその優勝、そして日本一。まさに来年のその日まで、燃えよ!ドラゴンズ!

【CBCアナウンサー 宮部和裕 CBCラジオ「ドラ魂キング」水曜(午後4時放送)他、ドラゴンズ戦・ボクシング・ラグビーなどテレビ・ラジオのスポーツ中継担当。生粋の元少年ドラゴンズ会員。山本昌ノーヒットノーランや石川昂弥プロ初打席初ヒット実況に巡り合う強運。早大アナウンス研究会仕込の体当たりで、6度目の優勝ビール掛け中継を願う。】

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