「ろんせつ(論説)」と「かいせつ(解説)」は何が違うのか? ちょっと、わかりやすく「せつめい(説明)」してみましょう

「ろんせつ(論説)」と「かいせつ(解説)」は何が違うのか? ちょっと、わかりやすく「せつめい(説明)」してみましょう

私たちは、CBCの「論説室」に所属する「解説委員」です。「ろんせつ?」「かいせつ?」。なんだかややこしいですね。「論説」というのは、あまり使われない言葉です。普通の人は、一生に一度も使わないかもしれません。「いやあ、けさ、息子に論説しちゃってさ」「お酒の席の部長ったら、論説が長くて閉口しちゃいました」なんて、まず言わないでしょうから。

一方で、「解説」はなんとなくわかりそうな言葉ですが、では、どこが違うのでしょうか。そういえば、似たような言葉で「説明」というのもありますね。たぶん、この中では、「説明」という言葉が、最もよく使われるのではないでしょうか。ということで、「論説と解説の違い」について、まずはザックリと「説明」するところから始めてみましょう。

新聞社と放送局

活字メディアと放送メディアの役割の違いから、簡単におさえておきましょうか。新聞には「社説」というものがあるように、ニュースや出来事に対する「意見・主張」をはっきりさせるのも、新聞社の大事な仕事です。つまり「論を説く」(主張をわかりやすく説明する)のが仕事だったりします。この「論=意見・主張」というところが、まさに「論説」のポイントです。

一方、日本では「放送法」という法律で、放送局には「公平」「できる限り多くの論点」などが求められています。このため、「主張する・論ずる」よりは、「それって、どういうことなの」を、できるかぎり「わかりやすく伝えて、理解してもらうこと」が重要とされています。つまり「解説」ですよね。「論」よりも「解」に重点があります。ですから、新聞社では「論説委員」、放送局では「解説委員」という肩書を使うのが一般的です(というか、ほとんど、そうなっています)。

ただ、私たちCBC(中部日本放送)は、日本で最初に放送をスタートさせた民間放送で、創業当時、メディアといえば、(NHKはありましたが)新聞などの活字が中心でした。そんな時代背景もあって、CBCは伝統的に、新聞社と同じ「論説委員」を名乗っていましたが、これは放送局としては珍しいケースだったのです。で、いまは、セクションとしては「論説室」と、かつての名前を残してはいますが、役職としては、ほかの放送局と同じように「解説委員」を名乗っていて、「解説=わかりやすく説明する」ことを中心に仕事をしています。

解説員の仕事

CBCテレビ:画像『photo AC』

と、ここまでが、「論説と解説の違い」と「CBCの特殊事情(?)」についての、「説明」(もしくは「解説」)ですね。ここに、「だから論説とはこうあるべき」「解説とはこうすべきものである」「メディアというものは」などの主張が入ってくると、次第に「論説」の度合いが濃くなっていくわけです。説明している側の「主張」や「考え方」が含まれてくるわけですから。

限られた時間で、わかりやすく解説をする…というのは、本当はなかなか難しい仕事です。テレビやラジオは、新聞や雑誌のように、受け手(読者)のペースで先に進むことができません。活字の場合、ちょっとわかりにくければ、少し戻って読みなおす…ということも可能ですが、放送ではそうもいきません。「耳で聞いただけ」でも、置いてきぼりをくわない説明こそ、放送メディアに求められている「解説」です(そして、そのノウハウを、ウェブにも活かせれば…と考えています)。

そんなハードルのある中、国内外で起きているすべて、それこそ政治・経済から、事件、社会問題、文化、スポーツ、芸能まで、どんな分野でも、「それって、どういうこと?」「何が問題なの?」「どこがおもしろいの?」というみなさんの疑問に、少しでもわかりやすくお答えするのが「解説委員」の仕事だと思っています。

「解説」には、経験や取材、調査やデータの裏付けが必要です。何かを主張しようとする「論説」ならなおさらです。だから、どんなメディアでも、まだ若くて経験の少ない段階で、勉強をする気がない人材や、わかりやすい説明が苦手な人間に、「解説委員」「論説委員」を名乗らせることは、まずありません(そうあって欲しい…と思っています)。

わかりやすさの追求

そして、なんといっても「わかりやすさ」も重要です。これが最大の条件かな…とすら、私は思っています。解説するテーマは、自分が興味のある分野や得意な分野ばかりではないかもしれません。それでも、私たちは、どうやったら「わかりやすく解説できるか」「理解してもらえるか」を考えています。これまでの経験がベースではありますが、さらなる「知識・情報の引き出し」を増やすことに、日夜、時間を費やしています。

とにかく、まずは、「わかりやすい解説」で、みなさんからの「へえ~、そういうことなのか」「なるほど、わかった!」の声を聞かせていただくこと。そして、「ならば、私はこう思う」と、それぞれのご意見を持つための第一歩になれば、「解説委員」にとって、これにまさる幸せはないのです。

『実はニュースなキーワード』(番外編)「論説と解説」
【CBCテレビ特別解説委員・石塚元章(いしづか・もとあき)】
放送記者、編集長、海外支局長、ニュースキャスターなどを経て、現在はTV『ゴゴスマ』(CBC-TBS系)、ラジオ『石塚元章 ニュースマン!!』、『石塚元章の金曜コラム』(CBC)などに出演。「硬いニュースを柔らかく、柔らかい話題も時に硬く」「論説より解説」がモットー。

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