サザン桑田佳祐が全国ツアーを完走!コロナ禍の列島に元気が贈られた夜

サザン桑田佳祐が全国ツアーを完走!コロナ禍の列島に元気が贈られた夜

サザンオールスターズの桑田佳祐さんが、全国ツアー『BIG MOUTH, NO GUTS!!』を横浜での年越しライブで打ち上げた。ソロとしては4年ぶりのツアー、ステージの桑田さん生声を聴けたのは、コロナ禍前のサザン40周年記念ライブ以来となった。12月初めの名古屋会場も、師走と思えない熱さにあふれていた。オンライン配信がすべて終わったことを受けて、今ツアーをふり返る。

コロナ禍で念願ステージ

新型コロナの感染防止対策として、各地で開かれたライブも入場制限が設けられた。2021年9月の宮城県から始まったツアーも、ルールに沿った人数に限られてきたが、この愛知公演から制限はなくなり、直前に空席予定だったチケットもすべて販売され、ツアーで初めて満員のファンがステージを楽しんだ。チケットはすべて電子チケット、従来の規制退場に加えて、今回は“密”を避けるため入場に際しても座席ブロック毎に推奨時間も案内されて、ファンは早めに席についた。“異例の”お土産グッズも配られ、その中にマスクとツアーキャラクターのマスクカバーも入っていて、感染を防ごうとの徹底した姿勢がうかがえた。恒例の客席ウェーブもなし、声援もなし、拍手のみで開演を迎えた。

待っていました!最初の曲は?

サザンであれ、ソロであれ、桑田さんのステージ最初の曲は予想が難しい。2015年サザンのツアー『おいしい葡萄の旅』、その1曲目『TARAKO』などは、その最たるものだろう。大いに驚いた。今回は秋に発売されたEP盤に収録されている内のひとつ『炎の聖歌隊[Choir(クワイア)]』に、開演の喜びをストレートに表した歌詞があることから「これかも?」とも思ってもいたが、蓋を開けてみれば『それ行けベイビー!!』だった。感染防止のため声を出せない分、会場からの拍手にはこれまでにない熱を感じる。ライブは静かに、そしてどこか厳かに(おごそかに)始まった。『炎の聖歌隊』は3曲目。「開演お待ちどうさん」「舞台の幕が開き、あなたと共に歌う」。コロナ禍でライブが次々と中止になった日々に思いを馳せ、“ここにたどり着いた”我が身にも、何だか胸がジーンとした。

粋な演出に感動の輪が広がる

CBCテレビ:画像『写真AC』より「ライブのイメージ」

コロナ禍のほぼ2年間、オンライン配信ライブの先頭を走ったのは、サザンオールスターズだった。2020年6月25日、デビュー記念日に配信したライブは驚異の視聴数を記録して大成功、以来多くのアーチストが続いた。しかし、やはり生の観客のリアクションは格別なのだろう。桑田さんのトークは楽しそうに大爆発、「高齢者65ちゃい(才)になりました」と繰り返したり、眠れない夜はホテルに女性を呼び出して“しりとりゲーム”で遊ぶと語り、その女性は「実は妻君」と種明かししたり、さらに愛知県常滑市でのライブがコロナ感染対策上で大きな問題になったイベントの名前まで飛び出した。圧巻は『OSAKA LADY BLUES』を「名古屋」にしての替え歌。名古屋城などの名所や名古屋めし、中日ドラゴンズ、ファンの集う中華料理店ピカイチまで歌詞に出てきたが、突如スタンド席の一角に人気の球団マスコット「ドアラ」が登場した時は、会場の盛り上がりも最高潮に達した。エンターテインメントを知り尽くした見事な演出だ。

桑田さん優しさあふれる歌詞

『SMILE~晴れ渡る空のように」は、東京五輪パラリンピックを盛り上げようと作られた歌だった。コロナ禍で1年延期された祭典がすべて終わった今、会場でその歌詞を噛みしめて驚いた。「悪戯な運命(さだめ)にも心折れないで」まるで、コロナ禍に翻弄された選手たち、そして周囲の大勢の人たちに歌いかけているような歌詞。この歌が、コロナ禍の随分前に作られていたことが感慨深い。ステージの背景には、オリンピックなどの映像は一切なく、東日本大震災から復興をめざす被災地、そして新型コロナのワクチン接種会場などの写真が次々と映し出された。締めの言葉は英語で「あなたの笑顔、私の誇り」。桑田さんの優しさが詰まった名曲だろう。

この歌あの歌!感動の26曲

合わせて26曲が歌われた2時間半のステージ。ソロ初期の名曲『遠い街角(THE WANDERIN’STREET)』やKUWATA BAND珠玉の一曲『スキップ・ビート(SKIPPED BEAT)』なども堪能。アンコールでは思いもかけぬヒデとロザンナの『愛の奇蹟』がデュエットで披露されて、かつて桑田さんが挑んだステージ「ひとり紅白歌合戦」的な空気も楽しむことができた。会場に訪れたファンはルールを守り、これまでのように大きな歓声を送ることもなく、マスクの下で思い思いに歌を口ずさんだり笑ったり、久しぶりの生ライブを楽しんだ。名古屋で初めて「満員御礼」となった会場は、温かくそしてひとつになっていた。

替え歌の歌詞にもあったが「マスクなしの笑顔が見たい」という桑田さんからのメッセージは、まだまだ警戒を緩めることができないコロナ禍で、心に灯った一筋の光のようだった。今回のツアー名『BIG MOUTH, NO GUTS!!』、訳すと「大口叩く根性なし」。いえいえ桑田さん、貴方は昔も今も「大口叩く“優しき”根性あり」です。そしてこれからも!

          
【東西南北論説風(310)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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