豆腐の値段が高くなるの?冷奴から湯豆腐の季節へ食卓の心配

豆腐の値段が高くなるの?冷奴から湯豆腐の季節へ食卓の心配

夏の天候不順によって、野菜の品薄と高騰が台所を直撃したかと思ったら、今度は豆腐の周辺がきな臭くなってきた。夏の冷奴、冬の湯豆腐、そして四季を通して味噌汁や吸い物の具、食卓のレギュラーメンバーに何が起きているのか?

豆腐メーカーなどの業界団体が、スーパーマーケットなどの小売業界に対し、窮状を訴える文書を出したのは2021年7月のことだった。豆腐を作るためのコストが値上がりして、このままいくと経営の維持が難しい、と値上げなどにも理解を求めるSOSであり、実に14年ぶりのことだという。豆腐メーカーの中には、すでに1割ほどの値上げをしたところもあるなど、長く価格が安定してきた豆腐を取り巻く環境が風雲急を告げている。

背景にあるのは、原材料である大豆の品不足と値上がりである。国産と輸入に分かれる大豆だが、日本豆腐協会の話では、まず「国産大豆」は、多くの夏野菜と同じように、異常とも言える夏の天候不順に直撃された。大豆の全国的な産地である佐賀県や福岡県は、九州で続いた長雨の影響を受けた。「粒が大きい」「糖度が高い」そんな高い評価があった九州産の大豆が不作となったそうだ。

食用大豆の8割を占める「輸入大豆」。その70%は北アメリカ産、アイオワ州などで収穫される。ところが、こちらは雨の多い日本とは逆に、干ばつによって大豆の生育が大きな影響を受けた。ひとつのサヤに通常は4~5粒が入っているが、2粒ぐらいしかないものが目立つと言う。天候問題に加えて、「輸入大豆」に大きな影を落としているのが、世界的な感染流行が続く新型コロナウイルスである。コロナ禍によって、船を動かす船員が感染したり、警戒して船を離れたり、コンテナ船が以前のように活動できなくなった。さらに日本に立ち寄るコンテナ船の数自体が減少していると言う。感染拡大を警戒しながらも経済が動き出している米国では、中国と結ぶコンテナの運賃が飛躍的に値上がりしたため、日本に向かうコンテナ船の数が少なくなり、それによって大豆の輸入量が影響を受けている。

大豆は食用油の原材料としても使われる、大豆不足を受けて、すでに2021年に食用油は3回も値上げされているが、11月からの値上げも発表された。実に年4回目の値上げになる。食用油の値上げは、揚げ物料理など家庭にも大きな影響があるが、豆腐業界にとっても、揚げ出し豆腐や油揚げの加工に響いてくる。

日本豆腐協会によると、大豆は保存が効くため、当面の豆腐作りは備蓄されている大豆によって困らないと言うが、それはあくまでも“当面”である。現在の大豆不足が続くと、年明けには、豆腐を取り巻く環境は厳しさを増すと予想されている。コロナ禍の中、家で食事する“おうちごはん”も増えていて、豆腐の需要はますます高い。鍋の季節を前に、豆腐の価格が、まるで湯気の向こうにあるように霞み始めている。気になる秋である。

         
【東西南北論説風(270)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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