世界が認めた街の治安を守るシステム「交番(KOBAN)」は日本で生まれた

世界が認めた街の治安を守るシステム「交番(KOBAN)」は日本で生まれた

万国共通の言葉になったようだ。それを導入した海外の街角に「KOBAN」というアルファベットが踊る。今や「KABUKI(歌舞伎)」や「SUMO(相撲)」などと並んですっかり国際的な名前になった。警察官が町の中で治安を守る「交番」制度、実は明治時代の日本で生まれた。

江戸時代には奉行所があり、同心らが犯罪を取り締まっていた。明治時代になって新政府は、フランスなどの警察組織を参考にしながら、東京に3000人の「邏卒(らそつ)」を採用し、「屯所(とんしょ)」を拠点にパトロールなどを始めた。「邏卒」は今の警察官、「屯所」は警察署である。1874年(明治7年)に警視庁が設立されて、日本での警察制度が本格的にスタートした時に、「邏卒」という呼び名は「巡査」に変わった。巡査たちは当時まだ治安の悪かった街の交差点に出るなどしてパトロールを開始した。

CBCテレビ:画像『pixabay』より「シンガポール旧ヒルストリート警察署」

戦後になって、世界各国の間で「ニッポンは治安がいい」という評価が高まった。なぜなのか?その理由として「街にはKOBAN(交番)があるからだ」と日本独自のシステムが評判になった、海外には警察署はあっても、さらに小さな出先機関はなかったからだ。特に熱心だったのはアジアのシンガポールだった。1970年代に都市型のニュータウンが続々と建設されて、犯罪の増加が大きな問題になっていた。パトロールの強化、さらに日頃から警察と市民の協力体制を築くにはどうしたらいいのか。そこで目をつけたのが日本の「交番」制度だった。早速、調査団が日本にやって来た。日本の警察も全面協力し、シンガポールに指導員を送り込んだ。そして1983年にシンガポールに「KOBAN」が登場した。導入してわずか5年で犯罪の件数は半分に減った。

シンガポールだけではない。「KOBAN」は、米国にも導入されて、ニューヨークのマンハッタン、ハワイのワイキキにも設置された。さらに、アジア諸国の他、ホンジュラス、エルサルバドル、グアマテラ、コスタリカなどのラテンアメリカの国々にも広がった。
ブラジルには2005年に「KOBAN」が誕生したが、サンパウロ州では導入後の10年で、殺人事件の件数がそれまでに2割にまで激減したと言われている。

筆者撮影:愛知県日間賀島の名物タコ型駐在所

警察庁によると、全国には交番、そして住居と一体になっている駐在所、現在合わせて1万2500か所が活動している。その長所は何と言っても「気軽に訪れることができる」こと。やや敷居が高いイメージもある警察署と比べて、「交番」は日頃からも訪ねることができる“市民と警察のふれあいの場”になっている。その意味では「交代で番をする」と同時に「人と交わって番をする」という名前の解釈もできそうだ。

警察と市民の日頃からのふれあいと犯罪防止へのスクラム。日本の「交番」制度で大切にされている人と人との絆は、海外での治安維持でも高い評価を得てきた。今やすっかり国際的な名前になった「KOBAN」。日本生まれ・・・「交番」は文化である。

          
【東西南北論説風(262)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※CBCラジオ『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』内のコーナー「北辻利寿のコレ、日本生まれです」(毎週水曜日)で紹介したテーマをコラムとして紹介します。

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