サザン?嵐?胸さわぎの年越しは配信ライブを気分しだいで責めてみた

サザン?嵐?胸さわぎの年越しは配信ライブを気分しだいで責めてみた

新型コロナウイルスが世界中を席巻する中での年末年始。2020年の大みそかは、恒例のカウントダウンライブがインターネット配信によって開催されるなど“新しい生活様式”での初めての年越しとなった。

サザンは配信ライブ“先駆者”

コロナ禍の夏にいち早く配信ライブを敢行したサザンオールスターズ。
推定50万人が観たという実績によって、新しいステージスタイルの先鞭をつけたが、今度は年越しとしては6年ぶりとなるライブを無観客による配信で実施した。『ほぼほぼ年越しライブ2020「Keep Smilin’~皆さん、お疲れ様でした!! 嵐を呼ぶマンピー!!~』と名づけられたライブは、12月31日の午後10時すぎから有料で配信された。事前に収録されたもので、メンバー自身も“炬燵に入って”自分たちのステージを楽しむという触れ込み、期待のライブだった。

懐かしい曲にファン興奮

やはり大みそかの夜にサザンメンバーの顔を見ると嬉しくなる。注目のオープニング曲は、なんと『ふたりだけのパーティ』。1980年デビュー3枚目のアルバム『タイニイ・バブルス』の1曲で、ライブの最初に歌われるのは史上初という希少曲。続く『My Foreplay Music』、デビューアルバムからの『いとしのフィート』など、ライブ前半は1978年のデビューから5年目までの懐かしい曲が多く、桑田佳祐さんはじめメンバーのこだわりを感じさせるセットリストだった。さらに『走れ!!トーキョー・タウン』や『世界の屋根を撃つ雨のリズム』など、アルバムに収録されていないレアな曲が立て続けに披露されるなど、ファンにとっては垂涎の的となったステージだった。

サザンから嵐へのエール?

圧巻はライブの真ん中あたりで披露された『Ya Ya(あの時代を忘れない)』だった。
会場の横浜アリーナ客席には無数のライトが灯って、サザン数々の名曲の中でも、特にファンに愛され続けているこの歌が披露された。お互いにギターを鳴らすだけでわかり合える友という歌詞では、大学時代から共に歩んできたサポートギタリスト斎藤誠さんと桑田さんのツーショット、とびきり素敵な恋もしたという歌詞では妻であるキーボード原由子さんとのツーショット。この粋なカメラワークに象徴されるように、サザンを愛し、サザンの歌と魅力を知り尽くしたスタッフによる映像作りも実に心地よく、つかの間だが未知のウイルスと対峙する疲れを癒してくれた。
『ボディ・スペシャルII』『エロティカ・セブン』『BOHBO No.5』と続いた怒涛の盛り上がりの締めは『マンピーのG★SPOT』。毎回桑田さんがかぶるヅラ(かつら)が注目を集め、夏の配信ライブではアマビエと「疫病退散」の文字が頭上で踊ったが、今回は「嵐」の一文字。この大みそかをもって活動を休止する人気グループ嵐への桑田さんからの熱いエールだった。

嵐5人は生配信ライブに挑む

その嵐である。サザンのライブに先立つこと2時間前の午後8時から、こちらは東京ドームを会場に生ライブを実施しネット配信した。デビューから21年、「国民的アイドル」という言葉すらも超越したような5人が選んだ節目の舞台はオンラインによるライブだった。ファンクラブメンバー限定の抽選ですらチケットが手に入りにくい嵐のコンサート。コロナ禍によって通常通りのライブが開催しにくいという理由とは言え、逆に沢山の人たちへメッセージを届ける場所ができたと言える。
1曲目の『ワイルドアットハート』からエンジン全開。ネット画面を見守る私たちファンも惜別の思い全開。櫻井翔さんの「初日にしてファイナル」という言葉に笑い、相葉雅紀さんの「いったん終わりと思うと妙に緊張する」という言葉にしんみりし、リーダー大野智さんのどこか達観したような、でも少しホッとしたような表情に熱い感情がこみ上げる。

ニノと松潤の涙にファンも感涙

ライブ途中、紅白歌合戦に生出演した30分間ほどは配信もお休み。「NHK紅白歌合戦に出演中」というテロップが表示された。これも生ライブらしい対応だった。聴くたびに元気が出る『GUTS!』やメンバー5人が一緒の時間を愛おしむように歌った『Love Rainbow』、さらに今も色あせないデビュー曲『A・RA・SHI』など、数え切れない曲たちのクライマックスは『感謝カンゲキ雨嵐』。ファンから寄せられたメッセージがドームに映し出されて5人を包み込む。
最後に5人がひとりずつ挨拶したが、驚かされたのは二宮和也さん。「まだまだツッコミたかったし、もっともっといじりたかった」とグループの活動休止を残念がる思いを素直に語った。そしてラストの松本潤さんがドーム天井のメッセージを見上げ「嵐は夢でした」と涙した瞬間、多くのファンも涙腺爆発の頂点を極めた。「いつかこの夢の続きができたらいいな」という松潤の言葉は、そのまま生配信ライブを見守ったファンすべての思いだったのではないだろうか。配信は午前0時前、ライブ直後の5人の寄せ書き画面を紹介して幕を下ろした。

紅白歌合戦の原点とは?

大みそかと言えば、紅白歌合戦にも少しふれたい。
新型コロナ対策のため、初の無観客開催となった。NHKホールの他、複数のスタジオを結んでの放送だったが、それによってオーケストラなど生演奏をバックに歌う歌手の数も多かった。かつて紅白歌合戦はステージ上にバンドが“常駐”した。それも紅組用と白組用の2つのオーケストラである。いつの頃からか姿を消し「カラオケ紅白」的な様相となっていたが、今回はひとつの原点を見せられた思いだった。
生演奏で歌を披露すると、歌手の実力が如実に表れる。踊りを見せるために実際には歌っていない現象など起きようがない。「歌合戦」という以上は歌を大切にしてほしい。今後への布石になればいいと思った。
SuperflyさんやMISIAさんら女性シンガー圧巻の歌が印象に残ったが、そんな中、坂本冬美さんが歌った『ブッダのように私は死んだ』は桑田佳祐さんが彼女のために書き下ろした新曲。その年こその歌を披露することも、紅白歌合戦の原点のひとつだろう。

桑田佳祐さんがこれまでもライブの最後に「ありがとう!」という感謝と共に、度々叫んできた言葉がある。かつて食道がんの闘病から復活した桑田さんが発するだけに、いつも重く受け止めてきたが、今回の配信ライブの締めくくりでも同じ言葉が飛び出した。
「死ぬなよー!」
全国の新型コロナ新規感染者数が4500人を突破して緊張が走った大みそかだけに、心にぐさりと刺さった桑田さんからの切実なエールだった。

【東西南北論説風(203) by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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