ボンド引退!映画「007」シリーズの後任スパイに黒人女性登場へ

ボンド引退!映画「007」シリーズの後任スパイに黒人女性登場へ

EU離脱問題で揺れ続ける英国から届けられた驚きのニュースが、世界中の映画ファンの心を揺らした。人気スパイ映画「007」シリーズ、2020年公開予定の最新作で、ジェームズ・ボンドではなく「007」が黒人女性になるというのだ。

殺しのライセンスを持つ女性007

「007」シリーズは、英国諜報部(MI6=Military Intelligence 6)の国際スパイであるジェームズ・ボンドが活躍するアクション映画である。1962年(昭和37年)に製作された『007ドクター・ノオ』が第1作で、これまで24作品が発表されてきた。
「007」とはスパイのコードネーム(暗号名)であり、任務遂行中に自らの判断で容疑者を暗殺してもいいという「殺しのライセンス」を政府から与えられている。
これまで57年間「007=ジェームズ・ボンド」だったのだが、ついにボンドが引退し、「007」は女性に移るという大きな節目を迎える。新しい「007」になるのは、黒人女優のラシャーナ・リンチさんで、英メディアが一斉に報道した。

ボンド男優の思い出

主人公ジェームズ・ボンドは、これまで6人の男優が演じてきた。何と言っても有名なのは初代ボンドを演じたショーン・コネリーさん。何とも言えない男の色気があふれて、どこか品のあるチャーミングなヒーローだった。
ショーン・コネリー版ボンドの人気は、6作目で別の俳優に役が移ったものの、再び7作目で復帰したことでも証明された。
現在のボンドはダニエル・クレイグさん。2006年の21作目『007カジノ・ロワイヤル』から登板しているが、登場時は「原点回帰」ボンドとも言われた。タフだけれど悩みも多いという人間臭いボンド像を見事に演じている。最新作で引退してしまうと言うのだが・・・。

ユニークなシリーズ作品は?

映画「007」シリーズは、その時々の世界の姿をスクリーンに映し出してきた。まず東西冷戦、それが終わると国際テロリストに苦闘する国々など、007ジェームズ・ボンドの“相手”にはその時の世相が色濃く映し出されてきた。
ユニークな作品を紹介すると、まず5作目の『007は二度死ぬ』(1967年)。日本が舞台になり、テレビドラマ『Gメン75』でおなじみの俳優・丹波哲郎さんが日本の情報機関のボスとして登場し、ボンドガールとして若林映子さんや浜美枝さんらも出演した。1964年(昭和39年)の東京五輪開催の熱冷めやらぬ町での活劇だった。
10作目の『007私を愛したスパイ』(1977年)には最強の悪役が登場した。鋭い牙を持つ殺し屋「ジョーズ」である。直前にスティーヴン・スピルバーグ監督が人食い鮫との闘いを描いた映画が大ヒットしたが、そこからヒントを得ての宿敵誕生。リチャード・キールさん演じた宿敵「ジョーズ」は人気を得て次の作品にも連続登場した。その作品『007ムーンレイカー』(1979年)はシリーズ11作目、ボンドが何と宇宙まで行ってしまうという荒唐無稽なストーリーだった。これも映画『スターウォーズ』第1作目の公開やアメリカ初のスペースシャトル打ち上げなど世相を反映したものだった。

女性ボスの登場も話題に

今回、黒人女性007が注目されるが、女性上司の登場も話題になった。
英国諜報部には「M」と呼ばれるボスがいて部下のボンドに指令を与えるのだが、17作目『007ゴールデンアイ』からは「M」がそれまでの男性から女性に代わった。
演じたのは映画『恋に落ちたシェイクスピア』でアカデミー助演女優賞を獲得した名優ジュディ・デンチさん。その強烈な存在感は、ボンドにとって母のような存在でもあった。日本の人気刑事テレビドラマ『太陽にほえろ』でも“ボス”役だった石原裕次郎さんが亡くなった後、奈良岡朋子さんが“女ボス”を演じたこともあった。こちらは1986年だから、007シリーズの先を行ったとも言える。

アベンジャーズにも通じる女性活劇

次期007役と報じられているラシャーナ・リンチさんは、映画『アベンジャーズ』シリーズの『キャプテン・マーベル』(2019年)に出演していたので、日本でもご存知の方が多いのではないだろうか。ヒロインの友人である空軍パイロット役、さわやかで力強い演技が印象に残っている。
このキャプテン・マーベルは、全世界の興行収入トップの座を確実にしたという大ヒット映画『アベンジャーズ・エンドゲーム』(2019年)でも、アイアンマンやキャプテン・アメリカらのアベンジャーズチームを救うために活躍する力強いヒロインが主役。こう考えると「007」シリーズは、ジェームズ・ボンドという男の色気むんむんのスパイが活躍しながらも、女性に重きが置かれてきた映画とも言える。

初の黒人女性「007」がどんな活躍をするのか、今から2020年の公開が楽しみな映画ファンも多いことだろう。人種差別発言を繰り返しているどこかの国の大統領が闘うお相手ということはないだろうが、イギリス映画が世界のどんな“今”を描くのか、その矜持にも注目したい。

【東西南北論説風(114)  by CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

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