福留孝介に贈る言葉「貴方は間違いなくドラゴンズ球団史の1ページだった」

福留孝介に贈る言葉「貴方は間違いなくドラゴンズ球団史の1ページだった」

竜戦士がまたひとり、ドラゴンズブルーのユニホームを脱ぐ。福留孝介45歳。長きにわたるファン人生の中、髙木守道、星野仙一、谷沢健一、ここ最近では山本昌、岩瀬仁紀、荒木雅博、そして吉見一起ら、多くのドラゴンズ選手の引退を見守ってきたが、あらためて福留孝介という選手がチームに残したインパクトを痛感する。素晴らしいスラッガー、そして光り輝いたプレーヤーだった。

星野監督「孝介、待ってるぞ!」

「サンデードラゴンズ」より©CBCテレビ

竜党にとってはPL学園高校時代から注目の選手だった。鹿児島県出身の福留選手が、幼き頃に訪れた宮崎県の串間キャンプで、ドラゴンズの立浪和義選手からもらったサイン。それが嬉しくて立浪さんと同じ高校に進んだというエピソードが、ファンの胸を強く打ったからだ。

ドラゴンズへの入団を希望して、最初のドラフト会議では1位の抽選くじを引き当てた近鉄バファローズ(当時)への入団を拒否した時も、申し訳ないけれど嬉しかった。そんな福留選手をフォローし続けていた当時の星野仙一監督が、3年後の逆指名ドラフトで正式に入団が決まる前に、CBCテレビ『サンデードラゴンズ』に出演した。

背番号「1」が空いている話をした後に「孝介、待ってるぞ!」とスタジオから呼びかけた瞬間は、ファンとして身体中に電流が走るほどの快感だった。福留孝介が竜に来る!

プロ初ヒットを目撃した

「サンデードラゴンズ」より福留孝介選手©CBCテレビ

1999年(平成11年)シーズン、ルーキーの福留選手はショートのポジションで開幕戦からスタメン出場した。

開幕3戦目の広島東洋カープ戦、ナゴヤドーム(現バンテリンドーム)ライトスタンドで観戦し、プロ入り初安打となる2ベース、そして同時に初打点を目の当たりにした。ドラゴンズに新たなスター選手が誕生した瞬間を感じた。

福留選手はしばらく打率3割を維持し、オールスターゲームにも出場した。広角に打ち分けながらも、力強くホームランも打つその打撃は、竜打線の中核を担うにふさわしいものだった。このシーズンは開幕11連勝という華やかなスタートダッシュもあって、ドラゴンズは11年ぶりにリーグ優勝を果たし、星野監督が宙に舞った。

松井秀喜を破って首位打者

その打撃にさらに磨きがかかったのは、山田久志監督の下で外野手にコンバートされた2002年からだった。入団を拒否した時のバファローズ監督だった佐々木恭介さんが、打撃コーチとしてドラゴンズに入団し、福留選手と二人三脚で打撃改造に取り組むという“不思議な縁”もファンにとってはドラマのひとつだった。

打率.343で首位打者を獲得した。讀賣ジャイアンツの松井秀喜選手の三冠王を阻止しての打撃トップという、何とも嬉しい勲章付きだった。福留選手はタイトルを手にして、1ランク上の強打者としてドラゴンズ打線をけん引していく。

優勝を決めたタイムリー

「サンデードラゴンズ」より福留孝介選手©CBCテレビ

福留選手が最も輝いたのは2006年(平成18年)であろう。落合博満監督の3年目、この年のドラゴンズは、球団史上でもおそらく最強と言えるチームだった。

打線は4番にタイロン・ウッズ選手が座り、ホームランと打点の二冠王。投手陣はエース川上憲伸投手が、最多勝、最多奪三振、そして最高勝率とタイトル総なめ、クローザー岩瀬仁紀投手が最多セーブ。

そんな中、福留選手は打率.351で2度目の首位打者を獲得、打点104、ホームラン31本と「3割、30本、100打点」も達成していた。

優勝マジック1で迎えた10月10日の東京ドーム、延長12回表に福留選手が打った決勝タイムリーは、今なおファンの間で感動の語り草である。福留選手は、並み居るチームメイトを抑えてシーズンMVPに選ばれた。ファンからしても文句なしの受賞だった。

立浪和義と福留孝介の“縁”

「サンデードラゴンズ」より福留孝介選手©CBCテレビ

歳月は巡り、米国メジャーでの挑戦、そして帰国後の阪神タイガースでの8年間を経て、福留選手は2021年シーズンに再びドラゴンズのユニホームを着た。

暮れも押し迫った頃、シーズンを終えた福留選手と偶然にも話す機会があった。ドラゴンズに戻ることができて本当に嬉しい、こう語る福留選手の笑顔がとても嬉しかった。それはきっと、2022年9月8日、現役引退を発表した記者会見での晴れやかな表情にも結びついているのだろう。

会見の席上、再びドラゴンズのユニホームを着た上で引退するという巡り合わせへの感謝を口にした。ましてや指揮官は、かつてサインをもらった“福留少年”が好きでたまらなかった立浪監督。福留少年がその後を追い続けた立浪和義という野球人である。

「サンデードラゴンズ」より福留孝介選手©CBCテレビ

残念ながら苦戦を強いられた2022年の立浪ドラゴンズ。「力になれなかった」と話す時だけ、その表情は一瞬の翳(かげ)りを見せたことが印象的だった。

福留選手は、現在1軍チームに帯同しながら、現役への別れを告げる道を日一日と歩んでいる。その姿は“野球の神様”がスポットライトを当てているかのように輝いている。福留孝介の野球道はこれからも形を変えて続いていくだろう。そして私たちもそれを見守っていく。

ドラゴンズファンのひとりとして、その背中に心からの感謝とこれからへのエールを送りたい。かつてプロ初ヒットを球場で見せてくれた福留選手、かなうならばプロ最後のヒットもこの目に焼きつけたいと願っている。
                                   
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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