立浪和義と新庄剛志“新監督考”~実は似ている「めざす野球は王道の本格派」

立浪和義と新庄剛志“新監督考”~実は似ている「めざす野球は王道の本格派」

「新庄(監督)ばかり目立っているね」と、よく声をかけられる。生粋のドラゴンズファンであることを知ってくれている人たちからの思いやりの(?)挨拶なのだが、いやいや大丈夫。立浪新監督は負けていませんよ。

同じ日に起きた不思議な因縁

“因縁”というものは、こういうものなのだろうか。中日ドラゴンズ立浪和義新監督が、「強いチームを作る。勝つために妥協はしない」と力強く宣言した就任会見。同じ10月29日に、北海道日本ハムファイターズは、新庄剛志氏の新監督就任を発表した。全国ニュースの注目は新庄新監督に大きく傾いた。ドラゴンズの秋季キャンプがスタートした11月4日、ナゴヤ球場で全ナインを前にした立浪監督が「目的意識を持って来年に向かおう」とハッパをかけた同じ日、今度は新庄新監督の就任会見が行われた。「ビッグボス」という言葉が一気にメディアを席巻した。思い出すのは、2006年(平成18年)の日本シリーズ。すでに引退を表明していた登録名「SHINJYO」選手に注目が集まり、不思議なムードの中、ドラゴンズは1勝4敗で敗れた。新庄剛志ひとりにやられた感が残った。落合博満監督に率いられたこの年のドラゴンズは、球団史上最強とも言える戦力だっただけに、ドラゴンズファンには悔しい記憶として残っている。

茶髪禁止の真意とは?

立浪新監督の方針として話題になっているのは「茶髪、長髪、ヒゲ禁止」。秋季キャンプ参加のドラゴンズナインはすでに監督命令に対応している。「今の時代に逆行している」という外野からの声もあるが、「キチっとした形でスタートしたい」と語る立浪新監督にブレはない。なぜなら、それは、現在のドラゴンズに足りないことを“正す”いわば象徴的なことだからである。「負けている時にベンチで笑っている選手がいる」と監督就任前に、チームにまん延している甘さを指摘していた立浪さん。一方、新庄新監督も就任会見でこう語っていた「いただきます、ありがとうございました、と言える選手を育てたい」。その後、減量や白髪染めについてチーム全体への指示も飛び出した。何とも似ている。

ビッグボスの本音に注目

新庄ビッグボスの発信は華やかである。米メジャーで最多ホームラン数を誇るバリー・ボンズ選手を臨時コーチに招こうとか、自ら3塁コーチに立ってみようかとか、連日メディアが“飛びつく”フレーズが登場する。その意味では、冒頭の「新庄(監督)ばかり目立っているね」という言葉は当たっている。しかし、派手なパフォーマンスの中に、時おり顔を出す真面目な本音に、ドラゴンズファンとしても納得する。

「チームに投手3人、野手4人のタレントを作れば、楽しいチームになる。全国に、背番号、顔も名前も覚えてもらえる」

まったくその通り。ではドラゴンズなら誰と誰か?と、ついつい考えている自分に気づく。

ビッグボス恐るべし。

2人のリーダーの根底には?

2011年の連覇を最後に、10年以上も優勝から遠ざかっているドラゴンズ。中田翔選手(現・讀賣ジャイアンツ)問題が何となくモヤモヤとしたままシーズンを終えたファイターズ。共にリーグ5位、そして共に出直しが必要な2つのチーム。秋季キャンプで、連日連日、選手を自ら指導するドラゴンズ立浪監督。そして派手なファッションと巧みな言葉で発信を続けながらも、コーチ陣と密にコミュニケーションを取りチームを見つめるファイターズ新庄監督。期せずして2021年秋に就任した2人の監督の根底には、その行動こそ違えど、同じ熱さの相当量の“厳しさ”が横たわっている。そして、実はオーソドックスできちんとした本格野球への道が、2人の目の前に続いているようだ。

「サンデードラゴンズ」より立浪和義監督©CBCテレビ

ナゴヤ球場からは連日ドラゴンズ選手たちの猛練習の報が届く。秋季キャンプが終われば、つかの間のオフ。しかし、両チームの選手で、この期間を「お休み」ととらえる選手はほとんどいないはずだ。両監督は同じ言葉を口にした「オフをどう過ごしたか、キャンプインの2月1日にわかる」。新監督の厳しさはすでにチームに浸透している。球春に向けて、2人の新リーダー、そしてそれぞれの選手たちから目が離せない。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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