実はドラゴンズはオープン戦が苦手?9年連続の負け越し決定でファンのヤキモキ

実はドラゴンズはオープン戦が苦手?9年連続の負け越し決定でファンのヤキモキ

ある川柳が頭に浮かんだ。「ドラファン 心の中は ドラ不安」。
実は今から40年以上も前の与那嶺要監督時代に中日スポーツ紙面の一般投稿コーナーに
掲載されたものだ。遠い昔のことで“読み人知らず”。こんな川柳をふと思い出したのは、中日ドラゴンズのオープン戦の戦いぶりを見てのことである。

本番前のオープン戦とは言うものの・・・

2021年は与田剛監督3年目のシーズン。8年ぶりにAクラスとなり、いよいよ悲願の優勝、10年ぶり10回目のリーグ優勝をめざす「待ったなし」の年である。しかし、ここまでオープン戦10試合を戦って3勝7敗。順位も12球団の下位に低迷中。
「オープン戦だ、オープン戦」
耳の奥に残るこの言葉は、かつて落合博満選手が口にしたものだ。ドラゴンズに移籍した春、後楽園球場(当時)で目を見張るような打球のホームランを打った夜、「すごい打球でしたね」と褒めた時に返ってきた言葉。はっきりとした口調で二度繰り返した。オープン戦ではなく公式戦での成績がすべてとその目は語っていた。
しかし、チーム全体としては少々事情が違う面もある。与田監督も口にした“勝ち癖”である。前年3位とはいえ、ドラゴンズは優勝した讀賣ジャイアンツに8.5ゲーム差をつけられた“挑戦者”の立場。昨シーズン60勝を挙げたとはいえ、優勝ラインには勝利数がまだまだ足りない。「目の前の試合に勝つ」こと、「勝ち慣れる」ことは大切だ。

9年連続負け越し中の竜

実はドラゴンズ、過去のオープン戦の成績も決して芳しくない。
高木守道監督2期目の2年目、2013年オープン戦以来、負け越しが続いていて、2021年も3試合を残して9年連続の負け越しが決まった。この期間には球団ワーストの7年連続Bクラスという日々が重なる。特に2016年は、オープン戦で最下位、ペナントレースも最下位、シーズン途中に谷繁元信監督から森繁和監督へと指揮官も交代するという、ファンにとっての悪夢もあった。
ただ、落合博満監督が率いた8年間、Bクラスは一度もなく、リーグ優勝4回、日本一1回という“黄金期”ですら、オープン戦は8回中3回しか勝ち越していないのだから、オープン戦の成績イコール公式戦の順位と一概に言い切ることはできないが・・・。
ここ20年間で、最も成績が良かったオープン戦は山田久志監督の2年目2003年、13勝5敗1分でこれが唯一ダントツの成績なのだから、やはりドラゴンズは伝統的に「オープン戦では勝っていない」と言える。ちなみにこの年のペナントレースは2位だった。

打ち込まれる先発投手

バンテリンドーム ナゴヤ©CBCテレビ

現在のドラゴンズ、勝ち負け以上に気になることは、個々の選手の勢いである。選手会長であり、2020年シーズンで初めて3割打者となった高橋周平選手は、仕上がりがとても良さそうだ。見るからに体重も増え、ホームラン量産も期待できる。しかし、それに続いて目立つ打者はすぐに名前が挙がらない。投手陣も中継ぎとクローザーはまずまず安定しているものの、開幕投手に指名された福谷浩司投手をはじめ、沖縄での春季キャンプから快調に調整してきたはずの柳裕也投手ら、先発が打ち込まれるケースも多い。防御率5点台は12球団の最下位だ(3月18日現在)。沢村賞の大野雄大投手だけは貫禄のマウンドを見せているが、こんな試合ぶりから、オープン戦と分かっていても、ファンとしてはついつい“不安”になってしまう。

他球団の若手選手が眩しすぎる

もうひとつは他球団に目をやった時に、新しい戦力たちの躍動に眩しさを覚えるからだ。阪神タイガースのドラフト1位スラッガー、オープン戦のホームラン王を走る佐藤輝明選手、讀賣ジャイアンツの2メートル野手・秋広優人選手、新たな“抑えの切り札”広島東洋カープの栗林良吏投手、こうしたルーキーたちに加えて、いよいよベールを脱いだ千葉ロッテマリーンズ“令和の怪物”佐々木朗希投手ら、公式戦に向けて輝きを放つ新星たちの姿が目立つ。東京ヤクルトスワローズの浜田太貴選手やオリックスバファローズの紅林弘太郎選手ら2年目の野手たちも開幕スタメンを勝ち取る勢いで活躍している。

出でよ!チームに勢いをつける若竜

根尾昂選手©CBCテレビ

ドラゴンズを見た時、ジャイアンツ戦で根尾昂選手が3安打したものの、ここまで際立つ若手は投打共に見当たらない。開幕スタメンの顔ぶれを現時点で予想してみると、結局レフトのポジション以外は昨シーズンとほとんど変わらなさそう。昨シーズン後半、ジャイアンツのリーグ優勝が早々と決まり他球団が将来を見据えて若手起用にシフトした中、ドラゴンズは従来のメンバーで戦い続けた。その結果のAクラス獲得でもあり、そのために若手の経験の場が少なかったとは決して言いたくないのだが、それを払しょくする意味でも、1人でも2人でも“新しい顔”が開幕ベンチに、そして開幕スタメンに登場してほしい。象徴的な存在として、3年目の根尾選手が、開幕戦の初回にレフトのポジションに走っていく風景を見ることができるかどうか。

ドラゴンズのオープン戦は残すところ3月19日からの3試合、いずれも本拠地バンテリンドーム ナゴヤでの戦いになる。球団創設85周年のシーズン、どんなメンバーで開幕を迎えることになるのか、その姿がいよいよ明らかになる大切な3試合に、ファンは“不安”でなく“期待”を込める。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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