竜のドラフト史でも異例の指名!「大学生外野手」3人獲得の勝負手と大いなる期待

竜のドラフト史でも異例の指名!「大学生外野手」3人獲得の勝負手と大いなる期待

記憶に残る最も古いドラフト会議は1969年(昭和44年)である。中日ドラゴンズは早稲田大学のスラッガー谷沢健一外野手を1位指名、前年1位入団の星野仙一投手と共に東京六大学のスターたちが相次いで入団し、まだ小学生だったファンとしてもワクワクした思い出がある。以来、毎年欠かさず、ドラゴンズのドラフト戦略を見つめてきたが、2021年はある意味、驚くべき内容だった。

驚き!3人の大学生外野手

ドラゴンズは1位で、上武大学のブライト健太外野手を指名した。他球団との競合はなく単独の指名だった。ブライト選手は身体能力の高い右打者で、早くから竜の指名候補に挙がっていた。2位指名からは、前日までのチーム成績によって指名するウエーバー順、ドラゴンズは3球団目に指名権を得ていて、ここでも大学生の外野手、駒澤大学の鵜飼航丞(こうすけ)選手を指名した。驚いたのは、6位で大阪商業大学の福元悠真(ゆうま)選手を指名したことだ。またも右打ちの外野手。指名は6人で終わったので、その半数である3人が「右打ちの大学生外野手」となった。

球団史でも珍しいドラフト指名

「中日ドラゴンズ2021年ドラフト指名選手一覧表」©CBCテレビ

ドラフト会議は1965年(昭和40年)に始まった。2021年の今回で57回目を迎え、数え切れないほどのドラマを日本プロ野球の歴史に刻んできた。ドラゴンズの歴史の中で、外野手の指名が3人というのも実は珍しいことなのだが、過去はいずれも高校生または育成選手が入ってのこと、大学生の外野手ばかり3人というのは、これまで85年の球団史の中でも初めてである。一方で投手の指名は、3位の石森大誠(たいせい)投手(独立リーグ:火の国サラマンダーズ)ただひとり。深刻な得点力不足が続いているチーム事情は理解できるが、2年前の1位指名である石川昂弥選手を筆頭に、2軍には打者の好素材が揃っている。それでも、野手それも外野手を多数指名した背景には、球団主導の強い意志がうかがえる。ドラフト会議のすぐ翌日にOB立浪和義氏に次期監督を要請したタイミングからして「指名に立浪氏の意向は入っていない」と球団は言うものの、実は“立浪監督ドラフト”第0回なのでは?とファンとしては勘ぐってしまう。

竜党メッセージ!ブライト選手、鵜飼選手、石森選手へ

1位のブライト健太選手には、開幕1軍から外野の一角を奪ってもらいたいと同時に、天性の明るさで、どちらかと言えばおとなしいドラゴンズというチームを一気に活気づけてほしい。澄んだ目で抱負を語る姿に、早くも竜党のエールがあふれている。

2位の鵜飼航丞選手には、かつて中京大中京高校の同期だった伊藤康祐(こうすけ)選手と激しく競い合ってほしい。どちらも右打ちの外野手、“プロの飯”を4年間食べてきた伊藤選手も負けてはいないだろう。「コウスケ競争」が楽しみだ。

3位の石森大誠選手、ドラフト指名後の記者会見で「もう少し上の順位かと思った」というひと言に、思わず拍手を送った。その負けん気こそ、今のドラゴンズがほしい気概である。

竜党メッセージ!味谷捕手、星野選手、福元選手へ

4位の味谷(みや)大誠捕手(花咲徳栄高校)、その強肩に期待である。つい少し前までは「捕手不足」だったドラゴンズには、木下拓哉捕手を筆頭に楽しみなキャッチャーが多い。まずは“最も若い”という武器で元気なプレーを見せてほしい。

5位の星野真生(まお)選手は地元・豊橋中央高校の内野手。京田陽太、根尾昂、土田龍空ら数々の先輩を前に「プロではショートで勝負したい」という抱負や良し。「星野」という名前はドラゴンズでは別格、“先輩”に負けない根性に期待したい。

6位の福元悠真選手には、ブライト、鵜飼両同期外野手に負けずに開幕1軍をめざしてほしい。過去のドラフトでも、下位指名選手が一気にレギュラーを獲得する“下剋上”は当たり前、大学キャプテンの意地を見せてほしい。

ドラゴンズ球団への強き要望

「サンデードラゴンズ」よりブライト健太選手©CBCテレビ

そんな6人の若竜を迎えることになる球団には、どうか上手く育てて、いいタイミングで早く起用してほしいと要望したい。今シーズンまでのドラゴンズは、若手の起用について数々の課題を残した。ドラゴンズファンは、躍動する他球団の新戦力を目の当たりにして、羨ましく思いながら、悶々とした応援の日々を送って来た。体制が一新される2022年シーズン、その最初のルーキーたち。背番号についても、引退や戦力外通告で“空き番号”となるナンバー内のみで検討するのではなく、既存のもの含めてチーム全体で再検討して背番号を決めるような、そんな新鮮さにも期待したい。

野手中心の指名が際立ち、球団史でも“異例”だった2021年ドラフト会議。それが正解だったのかどうか、結果が出るまでには時間はかかる。ただ、今回のドラフト会議がドラゴンズというチームの“節目”として大きな意味を持つことだけは確かだろう。夢と希望と期待を胸に、6人が竜の仲間入りする日を待ちたいと思う。

【東西南北論説風(286)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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