与田ドラゴンズ勝負の3年目・開幕に捧げる言葉は「先手必勝」あるのみ!

与田ドラゴンズ勝負の3年目・開幕に捧げる言葉は「先手必勝」あるのみ!

あっという間にこの日を迎えることになった。2021年プロ野球ペナントレースの開幕。球団創設85周年の中日ドラゴンズは、記念ロゴをユニホームの袖に飾り、3年目与田剛監督の下で10年ぶりのペナント奪還をめざす。

投打課題の残ったオープン戦

オープン戦は13試合戦った。5勝8敗で12球団中10位。首位だった阪神タイガース以外のセ・リーグ5球団は下位、このところ何かと話題になる「セ・パ格差」がここにも反映された結果だった。
ドラゴンズのチーム打率は12球団で下から4番目と、2020年得点力不足に泣いた打線は依然として“開花前”、さらにチーム防御率は5.50、最下位の東京ヤクルトスワローズが4点台、その他の球団は3点台または2点台なので、ドラゴンズ投手陣は先発を中心にオープン戦、実によく打たれた。

「サンデードラゴンズ」より与田剛監督©CBCテレビ

投打ともにオープン戦とはいえ、なかなか厳しい状況の中、光っていたのは盗塁数だった。チーム13個は、千葉ロッテマリーンズと並んで12球団トップ。2019年の盗塁数は33とリーグ5位、阪神タイガース近本光司選手ひとりの31個とほぼ並んでいるのだからいかに少なかったか。与田監督もキャンプ前から「機動力アップ」を強化ポイントに掲げていただけに、手応えの一歩だろう。昔から言われている「足にスランプはない」。シーズンに入っても、積極的に次の塁をめざしてほしい。

開幕戦で竜が刻んだドラマ

開幕戦はチームの監督や選手にとってはもちろんだが、プロ野球ファンにとってもやはり特別なゲームである。開幕スタメンオーダーを予想したり、今でこそ予告先発制度があるが、かつては開幕投手を予想したり、この日を迎えるワクワク感は何ものにも代えがたい。85年の歴史を持つドラゴンズ、開幕戦についても数々の思い出がよみがえる。川崎憲次郎投手の衝撃の開幕投手については、当コラムでも度々書いてきたが、現監督の与田剛投手や前人未到のセーブ最多記録を持つ岩瀬仁紀投手も、開幕戦でデビューした。高卒ルーキー立浪和義選手の開幕スタメンも懐かしい。その立浪選手は、新生ナゴヤドーム(現バンテリンドーム ナゴヤ)1997年4月4日の開幕戦で、先頭打者ホームランという離れ業(はなれわざ)を見せてくれた。やはり開幕戦にはドラマが似合う。

開幕11連勝の夢よもう一度

星野仙一監督に率いられた1999年シーズンの開幕11連勝も素晴らしかった。今なお開幕連勝のプロ野球記録である。これぞ開幕ダッシュ!
5カード目の讀賣ジャイアンツに負けるまで2週間以上続いた白星街道に、竜党は「負ける気がしない」と肩で風を切って毎日を過ごしていた。何と言っても強力な投手陣。開幕投手の川上憲伸投手を筆頭にした先発陣に加え、中継ぎと抑えがすごかった。ルーキー岩瀬投手とサムソン・リー投手の左腕、落合英二投手と“韓国の至宝”と呼ばれた宣銅烈(ソン・ドンヨル)投手の右腕、強力なカルテットのおかげで、極論、先発投手は5回まで投げれば勝利が見えていた。11年ぶり5回目の優勝は「投手王国」ががっちりと支え、星野監督は気持ちよさそうに胴上げの宙に舞った。開幕戦それに続く日々の、心地よい記憶である。その当時ルーキーだった福留孝介選手が、再びドラゴンズのユニホームを着た。その巡り合わせにも期待したい。

特別ルール「延長戦なし」影響は?

「サンデードラゴンズ」©CBCテレビ

新型コロナ禍で2年目のシーズン。開幕日は当初の予定通りで迎えられそうだが、残念ながら観客数は感染予防のため、人数制限が続けられる。最も大きな影響は、「延長戦なし。9回打ち切り」という特別ルールであろう。前年も「10回打ち切り」だったが、各チームの戦い方はさらに大きく変わる。引き分けの数も増えるだろう。最終的に勝敗以上に、この引き分け数がペナントの行方を左右することになるはずだ。今季は特にベンチの洞察力と采配力が問われることになる。特に投手陣、中継ぎと抑えを充実させたチームが有利になる。先行逃げ切りである。ドラゴンズは、祖父江大輔、福敬登、そしてライデル・マルティネスという3本柱のリリーフ陣を確立して、8年ぶりのAクラスを手にした。その戦いが2021年シーズンにも投影されれば、これほど心強いものはない。ただし、そのためには早めに点を取らねばならない。先発投手も試合を作らなければならない。とにかく「先手必勝」である。そして、今年は違うぞとライバルチームにもファンにも見せつける開幕ダッシュ、これも「先手必勝」と言える。

若竜の起用と台頭がカギ

「サンデードラゴンズ」より根尾昂選手©CBCテレビ

ここ数年ずっと指摘し続けているのは、チームに勢いを与える「起爆剤」の重要性である。過去にペナントレースの頂点に駆け上がったチームには、若い力の躍動があった。
ベンチは相応にして計算できそうな安定した顔ぶれでの戦いにシフトしがちである。しかし、8年ぶりにAクラスになったとはいえ、ドラゴンズはあくまでも“挑戦者”である。挑戦者が安定を求めてはいけない。力がほぼ拮抗しているならば、あるいは少し劣っていたとしても“伸びしろ”が見られるのならば、果敢に若竜を起用してほしい。根尾昂はじめこれまでにない数の若い野手たちが開幕ベンチに入ってくる。1年前の開幕前には当コラムで「新戦力浮上せず」と大いに嘆いたが、新たな光たちが眩しい。昇竜への「起爆剤」として我慢しながら上手に使い続けてほしい。いつの時代もファンは、ご贔屓チームの未来の姿を思い描いていたいものであり、それが開幕戦から目の前に見せられたら、シーズンの応援に対する力の入れ方も違ってくる。そのエールは間違いなく、チーム強化と上昇のパワーになっていく。

今は「優勝はドラゴンズ」と力強く口にする。開幕前は当然のことである。しかし、開幕した後も、そう言い続けていられるように、秋が早く訪れず日本シリーズまで応援し続けられるように、期待と不安、祈りと願い、ファンの熱き思いに包まれて、まもなく開幕のプレーボールが告げられる。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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