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竜の叫びを耳にしたか?ナゴヤ球場で23年ぶりの1軍戦に沸いた観戦コラム

竜の叫びを耳にしたか?ナゴヤ球場で23年ぶりの1軍戦に沸いた観戦コラム
論説室コラム

竜の叫びを耳にしたか?ナゴヤ球場で23年ぶりの1軍戦に沸いた観戦コラム

 2019年3月15日(金) 10:10
北辻 利寿
北辻 利寿

ナゴヤ球場©CBCテレビ

前夜からの雨は明け方には上がった。花粉が飛び始めるより早く、春の日差しが降り注ぐ中で続々と大勢のファンが野球場に集結し始めた。その表情にはどの顔にも少なからぬ高揚が見られた。
2019年3月7日、名古屋市中川区にあるナゴヤ球場。かつての本拠地で、実に23年ぶりにドラゴンズ1軍の試合が行われた。

長い行列の先に懐かしい思い出

開場は午前11時、試合開始は13時。しかし多くのファンは待ちきれない。10時15分に入場を待つ列の最後尾に並んだ時、すでに多くの人たちが列をなしていた。
新旧さまざまなユニホーム姿が見られる。入場を待ちながら周囲の会話に耳を傾けた。思い思いにナゴヤ球場、その前身である中日球場の思い出を披露し合っている会話が印象に残った。
球団発表では行列は1000人超、この数に合わせて開場は30分早められた。
15分後にようやく入場できて、バックネット裏のやや1塁側寄りに席を確保した。このゲームに合わせて東京からドラゴンズファンの友が来る。ちょうどタイミングよく、その友が乗っているはずの東海道新幹線のぞみがナゴヤ球場の東付近を通過した。スマホで撮影して送る。かつては外野席の脇から新幹線の通過が見られたこと、そして新幹線の車内からも球場スコアボードを見ることができたこと、そんな懐かしい思い出が蘇った。

球団史に輝く激闘と感動

23年ぶりの1軍戦。それは1996年(平成8年)10月6日、ナゴヤ球場の最終戦で讀賣ジャイアンツと戦って以来である。当時そのゲームを含めドラゴンズが3連勝すれば、2年前に同率でシーズン最終戦を戦った「10・8決戦」の再来になる可能性があった。しかし結果はまたしても負け。ナゴヤ球場の最後はジャイアンツ長嶋茂雄監督の胴上げと、「さようならナゴヤ球場!最高の球場だと思っております」という星野仙一監督の挨拶で幕を閉じた。
この2試合の他にも、1954年の初の日本一、その20年後に巨人の10連覇を阻止してのリーグ優勝、そして1987年の高卒ルーキー近藤真一(現・真市)投手のノーヒットノーランなど、ファンそれぞれに名場面の思い出を胸に抱えての観戦となった。

屋外球場の魅力を満喫

当日のナゴヤ球場©CBCテレビ

3000枚ほど発売されたチケットは事前にあっという間の完売。それを手にしたファンがスタンドでゲームを見守った。
まず打球音である。鳴り物入り応援に包まれてのドーム内ではなかなか聞くことができない、いわゆる「カキーン」という響きである。その音の強弱によって、スタンドからは打球の行方が瞬時に分かる。忘れていた感覚である。
そして頬に優しい早春の風。雨上がりで花粉が沢山混じっていることを承知しながらも、その心地よさの前では思わずマスクを外してしまう。屋外球場はこうだったな、と多くのファンが思い出したはずだった。

記念すべきゲームを楽しんだファン

ナゴヤ球場当日のスコアボード©CBCテレビ

試合で印象に残ったシーンは、しかしいずれも相手チーム・横浜DeNAベイスターズだった。ドラフト1位ルーキー上茶谷大河投手の見事なピッチング、そしてファウルフライだと思い込み1塁への全力疾走を怠った野手を即刻交代させたアレックス・ラミレス監督の厳しい采配には恐れ入った。
一方のドラゴンズは先発・大野雄大投手の復活を感じさせる投球以外はほとんどいいところがなく、5対0で敗れた。それでも、ドラゴンズ側のスタンドに陣取ったファンはもちろん、ほとんどの観客はゲームセットまで席を立とうとしなかった。それは23年ぶりナゴヤ球場での1軍ゲームをとことん楽しみ、そして名残惜しむかのように。
試合終了後に家路に着く人たちは、皆どこか満足そうだった。東京からやって来た友も「こんなゲームでは『10・8』の悪夢を拭い去れない」と言いながらも観戦を喜んでいた。しかし、それだからこそ、つめかけたファンに対して球団から何か勝ち星以外の“贈り物”を用意することはできなかったのだろうか。

ファンが欲しかった“贈り物”は?

チケットを購入して駆けつけた1ファンとしてわがままを言うことをお許しいただきたい。与田剛監督は「勝ちをファンに見せたかった」とコメントしたが、その与田投手がルーキーで迎えた開幕戦、1990年4月7日に鮮烈なデビューを果たしたのもナゴヤ球場だった。この時の対戦相手もベイスターズ前身の横浜大洋ホエールズ、そして与田投手の剛球を受けた捕手は中村武志・現1軍バッテリーコーチだった。
せっかく往年の与田-中村のバッテリーがベンチにいたのだから、この2人による始球式が見たかった。
それが無理でも、せめてベンチ前で2人がキャッチボールでも披露してくれたのなら、23年ぶりの歳月を噛みしめて球場を訪れたファンにとっては、新たな宝物を土産にできたと思うのだが。
今回は他球場を使用する日程調整の結果、一日だけの特別な開催となったが、それだけ竜党にとっては意義のある大切な大切なオープン戦の1試合だった。持ち越された“贈り物”は、是非シーズンの戦いの中で勝利という形で期待したい。

【CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。

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