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柳裕也投手が歩む「明治大学出身ドラゴンズ」エースへの道

柳裕也投手が歩む「明治大学出身ドラゴンズ」エースへの道
論説室コラム

柳裕也投手が歩む「明治大学出身ドラゴンズ」エースへの道

 2019年7月26日(金) 10:10
北辻 利寿
北辻 利寿

「サンデードラゴンズ」より中日・柳裕也投手©CBCテレビ

大学の先輩と後輩、醸し出す空気を体感させてもらった。
ドラゴンズ春季キャンプ地の沖縄・北谷球場の控室。現役時代をこの目で見ていない我々世代ですら、正真正銘「竜の大エース」と認める杉下茂さんから投手陣についての分析を聴いていた時に、背番号「17」番が入ってきた。柳裕也投手である。
丁寧に挨拶する柳投手に、淡々と応じながら優しい眼差しを送る杉下さん。明治大学から竜ロードへ進んだ、そして歩んでいる2人である。

3年目の大活躍にファン喝采

「サンデードラゴンズ」より中日・柳裕也投手©CBCテレビ

柳裕也投手、25歳、プロ3年目で大きく羽ばたいた。
与田剛新監督率いる2019年シーズンの前半戦のMVPは、打なら高橋周平選手、投なら柳裕也投手、これで異論はないであろう。
過去2年間で通算わずか3勝の柳投手は、前半戦だけで9勝を挙げた。セ・パ交流戦では3試合に先発して3勝、防御率も1.17という見事な成績で、優勝したパ・リーグ最優秀選手に次ぐ「日本生命賞」に選ばれた。セ・リーグからはただ1選手の受賞であるから立派なものである。
今季の好調さについて、二段モーションが合ったと分析する評論家もいるが、何よりここという時に三振を取ることができるコントロールの良さが際立っている。そして最も目を見張るのは、マウンドさばきであろう。「エース」という称号は決して安売りしたくないが、今季の柳投手にはそれを感じさせる“風格”がある。エースの風格。ドラゴンズファンとしてはついつい「明治大学」の紫紺のユニホームに結びつけ、明治出身の3人の先輩投手を思い出す。

竜の大エース杉下投手

杉下茂さん。背番号「20」。“フォークボールの神様”と呼ばれるほど落差のある変化球を駆使して、1954年(昭和29年)ドラゴンズに初めてのリーグ優勝と日本一をもたらしたエースである。そのシーズンには32勝をあげて、最多勝、最優秀防御率、最多奪三振など投手5冠を達成した。
プロ通算211勝117敗。93歳になった現在もキャンプのブルペンで元気に後輩投手を指導する姿に、ファンは心から感動する。

燃えるマウンド星野投手

星野仙一さん©CBCテレビ

星野仙一さん。背番号「20」。“燃える男”と呼ばれた熱きマウンド姿がなつかしい。
ドラゴンズ2度目のリーグ優勝は讀賣ジャイアンツ10連覇を阻止して1974年(昭和49年)に成し遂げられたが、先発に抑えに獅子奮迅の活躍をした星野さんはMVP級の活躍だった。
星野さんは監督としても2度優勝し、ドラゴンズに大きな足跡を残した。

黄金時代を支えた川上投手

「サンデードラゴンズ」にゲスト出演する川上憲伸さん©CBCテレビ

川上憲伸さん。背番号「11」。1998年(平成10年)入団早々のオールスターゲームにファン投票1位で選ばれると第2戦のナゴヤドームで新人投手として初のMVPに選ばれる大活躍。その年は14勝で新人王になった。
その後もジャイアンツ相手にノーヒットノーランを達成し、落合博満監督1年目の2004年にはシーズンでもMVPも手にした。球団史の残るエースのひとりである。

そして3人とも投手最高峰の「沢村賞」を受賞、日本プロ野球史を代表する投手である。拙著の中で「愛しのドラ戦士!球団史に輝くスター選手」として25人を選んだのだが、この3投手がその中に入っていることは必然であろう。

明大キャプテン「竜への道」

星野さんと川上さんは、明治大学野球部で主将(キャプテン)を務めた。
島岡吉郎監督の名指導から「島岡イズム」という言葉まで生んだ明治大学の伝統。そのチームでもうひとり主将だったドラゴンズ選手を忘れられない。高橋三千丈さんである。
高橋さんは1978年(昭和53年)ドラフト1位で入団した。その年は江川卓投手の「空白の一日」騒動によるジャイアンツ入団をめぐって球界が大揺れした。精悍な顔つきの明大出身右腕にファンは大いに期待した。故障によって選手生命は短かったがコーチとして長くドラゴンズを支えた。
この他にも、53年ぶりの日本一になった2007年、ジャイアンツとのクライマックスシリーズでの熱投が忘れられない小笠原孝さん(現2軍投手コーチ)、多彩な変化球を駆使して第2次高木守道政権時代にローテーションに加わった岩田慎司さん(現スコアラー)ら、ドラゴンズのユニホームを着た明治大学OBは枚挙にいとまがない。

柳投手が引き継ぐ素晴らしき力

「サンデードラゴンズ」より中日・柳裕也投手©CBCテレビ

明治大学野球部の伝統力とは?
杉下さん、星野さん、そして川上さんから、まず「人間力」という言葉が浮かぶ。チームを引っ張る統率力でもある。次に「俯瞰力」である。組織を大きな視野で見ることができる。それは自分が闘っているゲームを客観的に見ることができるということだ。そしてその上での「負けず嫌い」。いずれも闘争心旺盛なマウンドだった。
その系譜に舞い降りた最も後輩の若き柳投手である。2019年夏の時ならぬ応援歌「お前騒動」にチームもファンも揺れた中、9勝目を挙げた柳投手はヒーローインタビューで「最近いろいろありましたが、今日の勝利をきっかけにチームとファンがひとつになってがんばりましょう」とスタンドに呼びかけた。「負けず嫌い」で勝利した後に「人間力」と「俯瞰力」を見せてくれた場面。見事な納め方だった。

まず今季のAクラスへ熱投を!

明治大学からドラゴンズへと野球道を歩んだ先輩投手、3人は「沢村賞」を受賞しているが、「20勝」達成は杉下さんただ一人である。いずれ柳投手にはこの2つを同時に獲得してほしいと願う。そうなるとそのシーズン、ドラゴンズはリーグ優勝するであろうから、「MVP」という3つ目の栄冠も自動的についてくるはず。
でもその前に・・・連勝と連敗をくり返し“乱高下”している今季の竜をAクラスに押し上げる「負けず嫌い」な熱投に期待したい。
【CBCテレビ論説室長・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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