竜は灯台下暗し?ドラフト目前によぎる杉下茂さんの言葉「どう育て、どう使うかだ」

竜は灯台下暗し?ドラフト目前によぎる杉下茂さんの言葉「どう育て、どう使うかだ」

2021年プロ野球ドラフト会議が近づいてきた。得点力不足が続く中日ドラゴンズの指名狙いは、ホームランも打てる右の即戦力打者では?という声も高まっているが、その戦略で本当にいいのだろうか?考えてみたい。

右の強打者がほしい!

先発もリリーフも12球団トップクラスの投手陣を擁しながら、上位に大きく引き離されてBクラスに低迷する2021年のドラゴンズ。直面している課題ははっきりしている。チーム得点数もホームラン数も、リーグ最下位どころか12球団でも最も少ない(成績は2021年9月28日現在)。となれば課題は「得点力のアップ」である。スカウト会議でも、正木智也(慶応義塾大学)、ブライト健太(上武大学)そして鵜飼航丞(駒澤大学)という3人の大学生外野手の名前が挙がった。いずれも強打の右打者で魅力にあふれている選手だが、まだ仲間入りしていない新戦力に夢をかける前に、足元にも目を向けてほしい。

石垣、石橋そして郡司を忘れるな

「ドラゴンズには将来性ある野手が多い」多くの野球評論家が口にしている。「強打の右打者」というならば、現在のチーム内で次々と名前を挙げることができる。
入団5年目の石垣雅海内野手は、2018年フレッシュオールスターゲームの舞台で豪快なホームランを打ちMVPも獲得した23歳。3年目の石橋康太捕手は20歳、同じくホームランも打てる豪打のキャッチャーとして期待される3年目。同じ捕手ならば東京六大学の三冠王という看板を背負って入団した郡司裕也捕手は23歳、まだ2年目。さらに後半戦から1軍に上がった伊藤康祐外野手は4年目の21歳である。左打者では2年目19歳の岡林勇希外野手もバットコントロールの評価が高い逸材だ。

活躍の場は与えられたのか?

今回のドラフト候補として名前が挙がる鵜飼選手は、中京大中京高校時代は伊藤選手の同期だった。大学野球での成長もあると思うが、4年間“プロの飯を食べてきた”伊藤選手が、そうやすやすと負けるとは思わない。長年ドラゴンズを見守っているファンの立場で気になるのは、こうした若い野手たちに1軍の場で十分な活躍の機会が与えられたか、という点である。「灯台下暗し」ではないのか。

大エース杉下茂さんの金言

少し前に沖縄県北谷町での春季キャンプ地で、臨時コーチに来ていた球団OBの杉下茂さんと話す機会があり、ドラフトでの戦力補強について意見を聞いたことがある。「投手でも野手でもかまわない。肩が強く、足が速く、身体が丈夫。そういう若手を獲得することが大切。あとはどう育てどう使うかだ」。1954年(昭和29年)にドラゴンズ初の日本一を勝ち取った大エースは、微笑みながらこう語った。でも目の奥は決して笑っていなかった。

飛び出てこない若竜たち

「サンデードラゴンズ」より石川昂弥選手©CBCテレビ

与田剛監督の3年間、ドラゴンズはドラフトで、根尾昂、石川昂弥そして高橋宏斗という高校野球で注目された地元のスター選手を1位指名で獲得してきた。いずれも少年時代に「ドラゴンズジュニア」でプレーしていて、竜党の期待は大きかった。しかし残念ながら3人とも十分な活躍はできていない。「まだこれから」という慰め言葉は、東京ヤクルトスワローズの4番である村上宗隆選手を見るにつけて、まったく意味をなさないだろう。4年目22歳スラッガーの活躍がドラゴンズファンにもまぶしく羨ましい。目利きの問題か、使う側の問題か、いや本人の力不足か。「あとはどう育て、どう使うかだ」杉下さんの言葉が重い。

2021年ドラフト、実は高校生の投手にこそ逸材が多い。即戦力の打者が必要だというチーム事情は理解できるが、こういう時だからこそ、現場とフロント、組織のコミュニケーションをひとつにして、有意義なドラフト補強を実現してほしい。ドラゴンズの明日の姿を思い描きながら。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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