交流戦の初優勝は夢に終わった~与田ドラゴンズに足りなかった勢いと執念

交流戦の初優勝は夢に終わった~与田ドラゴンズに足りなかった勢いと執念

惜しい!実に惜しい!中日ドラゴンズはセ・パ交流戦での優勝を逃した。前半の戦いぶりからファンとしても応援にギアを入れて、2005年の交流戦スタート以来、初めての優勝を信じていただけに、本当に残念である。(成績は2021年6月14日現在)

初優勝へのスタートダッシュ

ドラゴンズは2021年交流戦の全日程を終えた。9勝7敗2分で勝ち越しは「2」。
交流戦7年ぶりの勝ち越しで、これで通算成績も180勝180敗12分と、ちょうど5割になった。そんな今回の交流戦、竜の前半の戦いぶりには目を見張るものがあった。
いきなり最初の相手が日本一球団の福岡ソフトバンクホークス。讀賣ジャイアンツが日本シリーズで2年連続「4敗」「4敗」と1勝もできなかった強豪相手になんと2勝1分。さらに北海道日本ハムファイターズには2勝1敗、千葉ロッテマリーンズにも2勝1分。3カード終えて6勝1敗2分で首位というスタートダッシュに「これはいけるぞ!」と期待は大きく膨らんだ。

強いぞ!ファンの期待大いに高まる

「サンデードラゴンズ」よりダヤン・ビシエド選手©CBCテレビ

何より試合ぶりが良かった。ロッテとの3戦目は、堂上直倫選手と井領雅貴選手が、スタメン起用に応えるホームラン。追いつかれた直後には大島洋平選手が、バット一閃、見事な決勝ホームランを放った。主役と脇役が見事な競演、その時点では12球団で最もホームラン数が少ないドラゴンズにとって、今季初の1試合3発、信じられないような快勝だった。根尾昂選手がプロ初ホームランを満塁で放った5月4日と並ぶ、ファンにとっても忘れられないゲームになった。ショート京田陽太選手に代わって1軍に上がってスタメンを続ける堂上選手の活躍、久しぶりのヒーローインタビューに謙虚に答えるその姿に、スタンドのファンは温かい拍手を送った。
この他、交流戦では、4番ダヤン・ビシエド選手の打撃が絶好調で連続試合安打、防御率と奪三振数がリーグトップの柳裕也投手がゼロ行進、そして東京五輪予選のためにチームを離れたライデル・マルティネス選手に代わった抑えの又吉克樹投手が切れ味よくセーブを重ねる、まだまだ他にも活躍選手が多かった。久しぶりに力強いドラゴンズ野球を見た。

なぜ?快勝の後に生まれるスキ

しかし、その一方で、勢いに乗れない戦いぶりは、交流戦の中でも顔を出した。ここという一番に勝てない。快勝の次の試合で大敗を喫したり、勝てる試合を引き分けにされたり、リーグ戦での残念な姿が現れた。交流戦前半にも時おり見せたスキは、後半になると大きな傷口となって開いてしまった。3カード連続の負け越し。象徴的だったのは、東北楽天ゴールデンイーグルスとの3戦目だろう。前の試合、キャプテン高橋周平選手の2連発を含む14安打の猛攻で、交流戦の首位に再び立った翌日、先発オーダーは大きく変わった。なぜ?結果は完敗で3位に後退した。

勢いを手放す残念な采配

実はこの風景は、これまでの与田ドラゴンズの戦いの中で度々見せられたものだった。せっかくつかんだ勢いを手放してしまう。あくまでもファンから見ての結果論なのだが、勝負は結果がすべてでもある。“波乗りが下手なサーファー”と当コラムでも昨今のドラゴンズをこう例えて久しいが、交流戦でも“波”を逃してしまった。最終目標はあくまでもペナントレースを制すること、しかし、交流戦をトップで勝ち抜くことは、間違いなく、その後の戦いに大きな勢いとなるはずだった。12球団での「優勝」なのである。長年低迷しながらも、見事に11年ぶりに交流戦優勝を果たしたオリックスバファローズ。交流戦用にローテーションを組み替えてまで勝ち抜いた中嶋聡監督の執念は、再開されるリーグ戦でも大いに生きてくると予感する。初優勝に手が届きそうだった交流戦、ドラゴンズの勝利への執念が見たかった。

リーグ首位の阪神タイガースとの差は12ゲーム、交流戦前よりもさらに開いた現実。しかしその一方で、これまで出場機会に恵まれなかった選手たちが、日替わりで活躍するようになった交流戦。マルティネス投手ら頼もしいキューバ勢もまもなく合流する。1軍も2軍もチーム一丸となってペナントをめざす、その姿勢を再確認した上で、まもなく再開されるリーグ戦に果敢に立ち向かってほしい。竜の勢いと執念、しっかり見せてほしい。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

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