ドラゴンズ温故知新!11「右翼手」編~平田良介がケガと別れを告げる日は?

ドラゴンズ温故知新!11「右翼手」編~平田良介がケガと別れを告げる日は?

新しい年2020年、中日ドラゴンズは球団創設84年目を迎えた。伝統あるその球団史は数多のスター選手に彩られ、熱き戦いの記録と記憶をファンの心に刻みつけてきた。筆者が独断で選んだ歴代ベストナインと現役選手を比較しながら、7年続くBクラスからの脱出に向けて、新たなシーズンへの期待と応援を届ける連載企画である。
締めくくりとなる第11回のテーマは「右翼手」。(敬称略)

歴代ベストナインは「マーチン」

ドラゴンズの歴代ベストナインを選ぶ時に、最も迷うのは、実は「右翼手」ではないだろうか。私は、1974年(昭和49年)シーズンの4番打者だったトーマス・マーチンを選んだ。外野守備については決して上手いとは言えない。しかし、その打撃、そして何より讀賣ジャイアンツの10連覇を阻止して、ドラゴンズに20年ぶりのリーグ優勝をもたらした“助っ人”4番に敬意を表しての選出とした。

心優しきヒゲの“助っ人”

マーチンの衝撃は、来日した1974年シーズンが始まってまもない4月のヤクルトスワローズ戦だった。3打席連続ホームラン、それもすべて2ランだった。最初は少しひ弱に見えたトレードマークのヒゲが、急にたくましく思えたから不思議だ。その年は35本のホームランを打ち、立派に優勝チーム4番打者の役目を果たした。
マーチンで忘れられないのは、その禿頭である。当時まだ27歳という若さにもかかわらず頭髪は少なかった。本人も自覚していたのか、ヒットで出塁した時に、ヘルメットを帽子にかぶり直す素早さは、打球の速さを上回るほどのスピードだったと記憶する。

福留孝介への限りない愛

外野手としての守備力に、打者としての打力を兼ね備えた「右翼手」は福留孝介であろう。
時代を平成に限るならば、ドラゴンズのベストナイン間違いなしである。高校野球の名門PL学園高校時代から注目されたスター選手で、高校卒業時のドラフト会議では、ドラゴンズを含む7球団が1位指名した。ドラゴンズには2年後に入団したが、背番号「1」が与えられたのも当然だった。当初は「遊撃手」だった福留は、山田久志監督時代の2002年(平成14年)に「外野手」へコンバートされた。無類の強肩を発揮すると共に、球団新記録となるシーズン186安打を打ち、打率.343で首位打者に輝いた。落合博満監督時代の2006年には、その迫力ある打撃には円熟味も加わり優勝に貢献、シーズンMVPにも選ばれた。米メジャーから帰国後は阪神タイガースのユニホームを着ているが、今も福留を「おらがチームの選手」と思っているドラゴンズファンは多い。

平田と故障の悲しい因縁

平田良介は2019年シーズンもけがに泣いた。攻守走すべてに秀でている上、スター性も兼ね備えたこの選手から「けが」という二文字がなければ、どこまで凄いプレーヤーになるのだろうかと思う。2018年は途中から1番打者に定着、自身初のサイクルヒットを記録するなど、シーズン打率.329で、自己最高のシーズンだった。守備力を買われてゴールデングラブ賞も獲得した。さらなる飛躍をめざした2019年シーズンだったが、5月には左足を、8月には死球から右手首を、それぞれ傷め、終わってみれば出場は100試合に満たない95試合。打率.278など打撃においてもパッとせずに、淋しいシーズンとなった。欠場中にライトのポジションにつく選手もいたが、平田良介の捕球におけるスピードと確かさ、さらにレーザービームの強肩を知るファンからすれば、「右翼手」に平田がいないことはゲームの魅力が半減したようなシーズンだった。

2020年シーズン展望

32歳でシーズンを迎える平田良介が、「右翼手」の文字通り“最右翼”であろう。しかし、それは決して確定ではない。2年目を迎える根尾昂の外野コンバート、さらに大型ルーキー石川昂弥の出番を考える中で、ドラゴンズの外野手争いは今後、熾烈を極めることが予想される。逆に、もしそうでなければ、ドラゴンズのAクラス浮上はないだろう。背番号「6」が再び、“不動の右翼手”の座につくことができるかどうか。ドラゴンズの「右翼手」からは目が離せないシーズンになりそうだ。

歴代ベストナインと現役選手を比較しながら紹介するシリーズ企画『ドラゴンズ温故知新!』。あらためて中日ドラゴンズという球団の伝統と、数えきれないほどの名選手の顔ぶれに驚かされた。同時に現在のチームにも、そこに仲間入りする可能性を秘めた選手が沢山いることも嬉しかった。
私たちファンは心をこめて全力で応援する。だからこそ、ドラゴンズナインは常にそれを忘れずに戦ってほしいと願う。2020年シーズンを終えた時に、歴代ベストナインに名を連ねるスター選手が新たに生まれていることを期待しながら、温かく時に厳しく、「昇竜復活」を掲げる2年目の与田ドラゴンズを見守ってゆきたい。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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