高橋周平選手が手にした“堅守の勲章”にドラゴンズ野球の真髄を見た!

高橋周平選手が手にした“堅守の勲章”にドラゴンズ野球の真髄を見た!

本人にとってはもちろんだが、ファンにとっても嬉しい初受賞となった。中日ドラゴンズの高橋周平選手が、セ・リーグ三塁手部門でゴールデングラブ賞を受賞した。

8年目での初受賞

ゴールデングラブ賞は、1972年(昭和47年)に「ダイヤモンドグラブ賞」として創設された。1985年から「ゴールデングラブ賞」と呼称を替えた、いわゆる「守備のベストナイン」である。ドラゴンズでは、打てなかったが“好守のショート”だったバート・シャーリー選手が創設の年にチームとして初受賞した。高橋周平選手は2019年シーズン、入団8年目にして初めて受賞となったが、今季の守備を見れば受賞は当然だと思う人は多いだろう。

力強い高橋周平の守備

高橋選手の守備は力強い。安定したフィールディングとスローイング、しかし時としてダイナミックである。「抜かれた!」と思った打球を、何度もサードで止めた。野性味もある。
9月14日ナゴヤドーム、大野雄大投手が阪神タイガース相手にノーヒットノーランを達成したゲームでの最後の打球処理が象徴的だ。「あっ!」と思った地を這うような鋭い3塁ライナーを見事にキャッチして、グラブを高々と掲げた。一瞬後、ドームに歓声がこだました。
守備の成長について、高橋選手本人は前年に守った二塁守備の効果を挙げているが、今季からの“主将”という立場も守備の成長に大きく貢献したのだと思う。

竜6選手が受賞した黄金シーズン

ドラゴンズのゴールデングラブ賞を語る時、「2004年」というシーズンが忘れられない。落合博満監督1年目、「守り勝つ野球」確立の原点とも言えるシーズンで、見事にペナントを勝ち取った。この年、ドラゴンズからは実に6人がゴールデングラブ賞を受賞している。9つしかポジションがない野球というスポーツにおいて、チームとしての快挙だと言える。投手・川上憲伸、一塁手・渡辺博幸、二塁手・荒木雅博、遊撃手・井端弘和、外野はアレックス・オチョアと英智、この6選手が受賞したが、ここで特筆すべきは、渡辺・英智両選手であろう。他の選手はレギュラーだったが、この2人は“控え選手”である。落合監督は抑え投手ならぬ「抑え一塁手」「抑え外野手」として起用し、両選手とも期待に応えた。その結果のゴールデングラブ賞受賞はとても嬉しいことだったであろう。

日本を代表した“アライバ”コンビ

「アライバ」と呼ばれた二遊間コンビもゴールデングラブ賞の歴史に名を刻んだ。
荒木雅博二塁手と井端弘和遊撃手。落合監督の就任と共に、本格的にコンビが結成された。春の沖縄キャンプで、三冠男・落合監督自らがノックバットを握り、鍛えに鍛えた二遊間だった。「2004年」に同時受賞すると、以来6年間、2009年シーズンまでダブル受賞を続けた。その前半の3年間、2006年まで2人はベストナインもダブル受賞を続けた。守りだけでなく攻撃面でも評価の高い、まさに“日本を代表する二遊間”だった。

大島洋平の外野堅守力

「サンデードラゴンズ」より大島洋平選手©CBCテレビ

高橋選手と共に、2019年シーズンにドラゴンズからゴールデングラブ賞に選ばれた大島洋平選手も球団史に名前を残した。7度目の受賞は、井端選手と並ぶチーム最多タイ記録である。この10年ほど、セ・リーグ外野手部門での常連である。打球に追いつく最短のコース選び、そしてスピードは何度見ても美しく、安心していられる。
大島選手は今季174本のヒットを打ち、セ・リーグ最多安打のタイトルを初めて獲得した。FA宣言せずに「生涯ドラゴンズ」を選んだだけに、打撃タイトルと共に8度目のゴールデングラブ賞を狙って、チーム記録を更新し続けてほしい。ドラゴンズからはもうひとり、遊撃手部門で京田陽太選手が選ばれてほしかったのだが・・・。

栄光の「2004年」を越えろ!

ドラゴンズの“守り”は、2019年シーズンに素晴らしい記録を更新した。チーム守備率は9割9分2厘、これまでドラゴンズ自らが記録していた9割9分1厘を抜いて、セ・リーグ記録を塗り替えた。従来のトップ記録だった年、それが「2004年」だったのである。今季はエラーの数も少なかった。チーム失策数は45で、これも「2004年」に記録した45失策に並ぶシーズン最少失策のリーグタイ記録だった。
この「2004年」からの落合政権8年間はリーグ優勝4回、日本一1回、すべてAクラスで今も“ドラゴンズの黄金期”と呼ばれる。今季の守備力はそのシーズンを越えたのだ。

キャプテン高橋周平選手のゴールデングラブ賞初受賞は、「昇竜復活」への象徴でもあり、力強い狼煙(のろし)でもある。高橋選手は「来季はエラーゼロ」を目標に掲げているという。まもなく折り返し地点を迎える秋季キャンプではチーム全員を引っ張って、来季はゴールデングラブ賞受賞者の数でも「2004年」を追い越してほしい。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか

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