中日のビシエドも負けるな!ソフトバンク柳田が魅せた「ホームランは野球の華」

中日のビシエドも負けるな!ソフトバンク柳田が魅せた「ホームランは野球の華」

フルスイングから放たれた打球は巨大ドーム球場の天井に到達した。その後、はね返ったボールはグラウンドに落ちてきたが、相手チームの野手たちも、そしてスタンドにいた5000人の観客も、一瞬あ然としたことだろう。

驚いた!柳田の天井直撃弾

福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐選手が、2020年7月18日の京セラドーム大阪、オリックス・バファローズ戦で打ったホームランは、その舞台となったドーム球場でも、そしてプロ野球史でも、長く語り継がれることだろう。
ライト方向へ高く高く打ち上がった打球は高さ40メートルほどの「スーパーリング」と呼ばれる屋根の照明灯付近に当たった。中日ドラゴンズの本拠地ナゴヤドームと同様に、京セラドーム大阪にも“認定ルール”があり、打球は「ホームラン」となった。推定飛距離150メートル。柳田選手は過去にも横浜スタジアムのセンター奥ビジョン直撃など度々豪快なホームランを打っていて、またも自らのホームラン史にも新たなページを刻んだ。

ブランコもビシエドも打った!

ドラゴンズファンが天井直撃で思い出すのは、かつて在籍したトニ・ブランコ選手が入団1年目の2009年5月7日、広島東洋カープの前田健太投手(現ミネソタ・ツインズ)から放ったホームランであろう。レフト側の天井、高さ50メートルに備え付けられているスピーカーを直撃して、ホームランに認定された。
11年たった今でも、観戦でナゴヤドームに訪れる度に、ついそこに目をやる自分がいる。ナゴヤドームは記念プレートなどのモニュメントを設置せずにとても残念だったが、京セラドーム大阪は今回どうするのだろうか。
現在ドラゴンズの4番として活躍するダヤン・ビシエド選手が、2016年6月8日にこの京セラドーム大阪で特大ホームランを放ち、左中間最上階の5階席の座席を直撃して穴を開けたことがある。この時もすぐに新しい座席に交換されて“記念の痕跡”は消されてしまったが、今回の柳田弾は何か一考してもいいのではないだろうか。

竜の思い出ホームラン史

かくのごとくホームランは、それを目撃したファンの記憶に鮮烈な思い出を残す。
ドラゴンズにおいても、1989年に落合博満選手が直前の打者までノーヒットノーランを続けていた讀賣ジャイアンツ斎藤雅樹投手から打った逆転サヨナラ3ラン、1999年に山崎武司選手が打った瞬間にホームベース上で両手を高く突き上げて咆哮した逆転サヨナラ3ラン、2006年にタイロン・ウッズ選手が落合博満監督を涙させた優勝決定の満塁ホームランなど、次々とその場面が鮮やかによみがえってくる。
変わり種としては、1977年にウィリー・デービス選手がナゴヤ球場で放ったランニング満塁ホームラン。これも球場やテレビ中継で目撃したファンの間では、40年以上たった今でも語り草になっている。

初観客の前でビシエドが打った!

開幕1か月たった2020年シーズンで言うならば、京セラドーム大阪でも特大のホームランを打ったビシエド選手。新型コロナによる感染防止のため開幕から無観客試合が続いていたが、初めて観客を入れた7月10日ナゴヤドームの広島カープ戦で10回裏に放ったサヨナラホームランだろう。「打った瞬間」という言葉がぴったりの快音、そして一直線で左中間スタンドに飛び込んだ打球に、ナゴヤドームは総立ちとなった。その試合の少し前には、野手を使い果たし「投手の代打に投手」というギクシャクした采配を見せられるなど、新型コロナ禍と同じような気分で悶々としていた竜党の気持ちを晴らすには、素晴らしいホームランだった。

本塁打が少ない与田ドラゴンズ

そんな魅力的な「ホームラン」という存在なのだが、このところドラゴンズには少し縁遠い。2019年シーズンは2割6分3厘でリーグトップのチーム打率を誇りながらも、チーム本塁打数は90本。優勝したジャイアンツは183本で半分にも満たない。
今季もこれまで本塁打数は18本と12球団で最も少ない。それも唯一の10本台と“独走”している(7月27日現在)。
ホームランを打とうとして各打者が自らの打撃を崩してしまっては本末転倒だが、かつて「全打席ホームランを狙っていた」と語った落合博満さんの言葉が、今とても懐かしく思い出される。

ホームランは野球の華、そして、そのパワーは絶大である。新型コロナによって翻弄される異例のシーズン、竜党が嘆き続ける今シーズンの低迷からドラゴンズを一気によみがえらせる豪快なホームランを待ち望んでいる。
     
【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

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