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ダイドードリンコ日本の祭り2007 勇壮なる少年武将 ! 「上げ馬神事」5月26日(土)15:24~

番組のみどころ

「上げ馬神事」は多度祭りの花形。その起源は南北朝の頃まで遡る。馬が絶壁を越えるか否か。その結果により、一年の農作物の豊凶を占ったのだ。騎手となるのは少年。彼は、家族ともども一ヶ月に及ぶ清浄なる生活を強いられ、そして、乗馬の訓練に勤しむ。


騎乗直前、仲間の絶唱の中にて

人馬一体、武者となる

4月1日、神占いにより騎手が決定。今年、多度地区の騎手に選ばれたのは平野祐基君(17歳)。髪を伸ばした少年は、表情に、幼さと純真さをたたえていた。

祐基君の生活は、翌日から一変する。早朝から先輩青年会による馬の扱いや心構えに関する指導が始まる。そして、その日のうちに彼は長い髪を切った。

父、和彦さんは言った。

「祐基は平野家の人間ではなく、多度区の者になった。何があっても仕方がない」。

母、幸枝さんと妹、真琳ちゃんは、女人禁制のしきたりにより祐基君との接触は禁じられた。高校生活に於いても女性との接触は許されない。十代、多感な青春期に「特別な時間」を送ることになった。

青年会の厳しい叱咤や激励。「親方」「乗り子付き」と呼ばれる先輩からの厳しい言葉が祐基君を追い込む。早朝からの訓練、自炊生活、男と馬とだけの語らい。そんな生活が続く中、幼さの残る表情に変化が生じる。そして、髪に2度目のバリカンを入れる頃、人馬一体、馬は見事に疾走する。表情は武者へと変貌していた。

5月、本番いよいよ目前。祐基君は、多度大社の滝壺で全裸となり身をこわばらせていた。先輩たちが「頭までつかれ」と囃す。無垢な背中が山の冷水に耐えていた。精進潔斎の暮らしは佳境を迎えていた。


歓声の後、親方に涙

歓声の後、先輩も涙

変わって、本番当日は夏のような日となった。大社には9万の人。皆が赤々としていた。

坂下には祐基君。武者姿に身を固めた彼の周囲では青年会が絶唱。
「あの坂を越えてゆけ!お前の手で越えてゆけ!」

祐基君は、歌声の中央で感極まる。
大観衆の中、荒ぶる馬に騎乗した祐基君。坂上、2mの絶壁では青年会が手をつなぎ鎖となって待ち受ける。その頂点では親方が大きく手を廻している。
「あっと言う間の1ヶ月でした」
祐基君は、絶壁に向けて馬を滑走させた。

大歓声のあと、堰が切れてしまった祐基君。目をはらして青年会に一升酒を振舞い続ける父。区の紋章に飾られた法被を湿らす親方。昂ぶる馬を、汗に涙を紛らわせて抑え続ける青年会。
皆がひとしきり泣き、そして落ち着きを取り戻した頃、祐基君が祭を振り返った。
「皆のやさしさがわかって…人の関係が大事というか…楽しい祭ができる先輩になりたい」。


歓声の後、祐基君涙止まらず
 

南北朝の頃より続く伝統神事「上げ馬」の意義は、運気を占う以外に「絆」を育むことにあった。

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