番組審議会

2021年

第83回 株式会社CBCラジオ番組審議会

開催日 令和3年6月18日(金)
書面参加
(敬称略・五十音順)
近藤清久 杉浦昭子 平松岳人 堀田あけみ
松尾清一(委員長) 村瀬幸夫(副委員長)
議題 I. 番組審議『ERのオーケストラ』
I. 番組審議『ERのオーケストラ』
放送日時 2021年5月29日(土)19時00分~20時00分
プロデューサー 森合康行
ディレクター・構成 森 理恵子(テラ・プロジェクト)
取材協力 太田哲太郎(テラ・プロジェクト)
取材収録 奥野健司
出演 岩田充永(藤田医科大学病院・救急救命センター長)
ナレーション 柳沢彩美(CBCアナウンサー)

《企画意図》

「現代地域社会で求められる救急医療の形とは何か」
救急救命室(ER)の医療現場を取材し、これからの救急医療の可能性と課題を探りました。

《番組制作のきっかけと展開》

昨年7月、藤田医科大学病院の救急救命センター長・岩田充永先生に、インタビュー取材を申し出ました。同病院は、同年3月、厚生労働省の要請により、新型コロナウィルス感染者を出したダイヤモンドプリンセス号(クルーズ船)の乗員乗客128人を受け入れました。
岩田先生は、その前代未聞の大仕事で陣頭指揮をとり、二次感染者を出すことなく、ミッションを果たした人物です。
その7月のインタビューで、二つのことが強く印象に残りました。
一つは、「未知のウィルスに立ち向かうためには、災害医療チーム・感染症専門医チーム・安全管理チーム、そのチーム力が不可欠でした。」ということばです。連日、政府や分科会などの「チームになりきれていない」コロナ対策を目の当たりにする中で、そのことばに、「リーダー」の姿を感じました。
そして二つ目は、近隣の小学生たちから激励の寄せ書きを贈られた、というエピソードで、思わず涙する、先生の姿です。
胸打たれるものを感じ、後日、岩田先生のご著書「ERのクリニカルパール」を拝読しました。それは、研修医や若い医師たちに向けた、指南書です。救急医が信念として抱く、医師の原点、を垣間見る想いがしました。
岩田先生が心血を注ぐ、救急外来・救急救命室、通称・ER。10年ほど前から日本国内でもER型医療を導入する救急救命センターが増えてきたと言います。
何故、ERなのか。
医療現場を取材する、ということのハードルの高さを痛感する道程が、そこから始まりました。

まず、現場の定点収録の許可をとることの困難さ、そして、およそ20時間ごとの収録機材の設置と回収の繰り返し、さらに待っていたのは、膨大な量の定点収録音源のヒアリング・・・。許可をいただいたことに感謝しながらも、何故始めてしまったのか、と後悔しつつ。果たして、膨大なER現場の音源には、「医業の原点」とも言うのでしょうか、献身のエネルギーがあふれており、あらためて、ただ、医療従事者への感謝の念が湧いてくるばかりでした。
番組では、その「医業の原点」をシンプルに伝えながら、これからの地域社会で、医療がどのように提供されていくことが求められているのか、模索しました。

議事の概要

   《審議委員の主なご意見》

  • 極限の状況で戦う医療スタッフの緊迫した様子を描くドキュメンタリーに対し、人間とその人生に焦点を当てたものとなっており、大変強いインパクトがあった
  • 音で伝えるラジオの特性を見事に生かし、日本の医療の未来という重いテーマを「オーケストラ」のキーワードに包み込む意外な展開に引き込まれ、あっという間の1時間だった。
  • 先進的な一人の医師に着目し、日本の救急医療が抱える問題点を浮かび上がらせたすばらしく重厚な番組。
  • 映像とは違い、頭の中で確認させ、なおかつ情報が多すぎず、ラジオの良さを実感できる濃厚な番組だった。
  • 人選に加え、新型コロナウイルスへの対処が手探りだったダイヤモンドプリンセス号の事例を描き、記録的な価値の高い番組だと思った。
  • ナレーションが一歩引いて、医療現場における生の音が大きな効果を担い、ここぞという場所で音楽が使用されており、文句なしに最高の作品だった。

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