ジャングルジムは何処へ?姿を消していく公園や校庭の遊具たち

ジャングルジムは何処へ?姿を消していく公園や校庭の遊具たち

子どもの頃は毎日のように遊んだ公園に久しぶりに立ち寄ると、どうも風景が違う。かつて親しんだ遊具がなくなっている。ジャングルジムは?シーソーは?ブランコは?いつのまにか、公園の遊具たちも“世代替わり”をしていた。

人気だった「ジャングルジム」

ジャングルジムは、鉄のパイプを組み合わせた遊具で、もともとは1920年(大正9年)に、米国のシカゴで発売された。「ジャングルジム」というのは商品名で、日本に入ってきた頃は「枠登り」と呼ばれていたそうだ。そんな歴史のことなどつゆ知らず、最もお世話になった遊具だった。滑り台と組み合わせてあるものもあった。登ったり、ぶら下がったり、ジャンケンで先頭を決めて、その友達がたどるコースを皆でついて行ったり、“ワンダーランド”的に楽しかった。

「回転ジャングルジム」の魅力

CBCテレビ:画像『写真AC』より「回転ジャングルジム」

そのジャングルジムを“球形”にして、地球儀のように回転するようにしたものが「回転ジャングルジム」だった。ある日、小学校の校庭に登場した時は、これは一体何物かと驚いた。中に入って、外側にいる人が全体をクルクルと回して、回転を楽しむ。慣れてくると、回っている間に飛び乗ったり、中には入らず外枠につかまって足を伸ばして“スーパーマンごっこ”をしたり、なかなか遊び甲斐のある遊具だった。

体力作りには「うんてい」

CBCテレビ:画像『写真AC』より「うんてい」

公園にも校庭にもあった「うんてい(雲梯)」。かつて、城を攻める時に敵の城壁にかけた“はしご”を「雲まで届きそうな長いはしご(梯)」と呼んだことが、名前の由来と言う。はしごを水平に設置したような形で、そこにぶら下がって、片手ごとに前へ前へ進む。握力に腕力、さらに、前進するための腹筋と背筋、かなりの運動神経が必要とされ、さらに“チャレンジ精神”を鍛える意味でも、教育面で重宝された遊具だったようだ。もっとも、筆者は大の苦手で、ぶら下がるだけが精一杯。遠足で動物園などに行くと、檻の中のサルたちが、すいすいと移動している姿がうらやましかった思い出がある。垂直に立てられた棒を、手と足を使って上っていく「登り棒」も校庭にはあった。これも、かなりの腕力と脚力が必要な遊具だった。沢山の遊具たちに囲まれて成長した。

姿を消していく遊具たち

CBCテレビ:画像『写真AC』より「ブランコ」

そんなジャングルジムも、回転ジャングルジムも、うんていも、いつのまにか姿を消し始めた。けがをする子どもたちが増えたことが、主な理由だった。校庭にある遊具で、最も多い事故は「落下」、全体の4割を占めているそうだ。また、子どもというものは、大人が予期しないような行動をすることがある。回転ジャングルジムの“スーパーマンごっこ”など、なかなか思いつくものではない。手が滑って、地面に叩きつけられた友だちもいた。

さらに、最近の異常気象が加わった。猛暑によって、金属パイプはとても熱くなった。遊んでいて火傷(やけど)する子どもも出るようになった。そして、公園や校庭の遊具たちにも「リスク回避」という時代の波が押し寄せた。

公園の風景も変わった

国土交通省は2000年代に入ると「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」をまとめ、本来の目的とは違った遊具の遊び方をしないように基本方針をまとめ、公園に関わる団体も、遊具の設計や構造を見直して、安全性への留意を強化するようになった。こうして、遊具の見直しが進む中で、懐かしい遊具たちも姿を消していったのだった。最近では、事故を防ぐために、ストレッチや筋トレに使われるような遊具が増えて、子どもたちよりも、散歩で訪れる高齢者の方が、公園の遊具を使っているとも聞いた。時代は変わったのである。

公園や校庭の遊具は、遊びながら体力作りをするためには欠かせないものだった。そして、子どもの頃は、遊びながら、時に痛みも伴って「これは危ない」「これなら大丈夫」など、“さじ加減”を学んだように思う。事故があってはもちろんいけないが、“危ないもの”だけでなく“危なそうなもの”も次々と姿を消していく世の中が、ますます加速している。

          
【東西南北論説風(462)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※『北辻利寿のニッポン記憶遺産』
昭和、平成、令和と時代が移りゆく中で、姿を消したもの、数が少なくなったもの、形を変えたもの、でも、心に留めておきたいものを、独自の視点で「ニッポン記憶遺産」として紹介するコラムです。
CBCラジオ『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』内のコーナー(毎週水曜日)でもご紹介しています。

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