「グミ」を愛していますか?日本で驚異的に進化したドイツ生まれのお菓子

「グミ」を愛していますか?日本で驚異的に進化したドイツ生まれのお菓子

コンビニエンスストアのお菓子コーナーの主役のひとつと言えば「グミ」である。プルプルと弾力性を持った、いわゆる“キャンディー”なのだが、店に並んだその豊富な種類や品数に圧倒される。今や“お菓子界のトップランナー”と言っても、過言ではないだろう。

「製造過程『グミ液』」提供:株式会社 明治

「グミ」は、1922年(大正11年)に、ドイツの菓子メーカーであるハリボー社が発売した。「グミ」は、ドイツ語で「噛む(gummi)」の意味。当時のドイツでは、歯の病気にかかる子どもが多いことが、社会問題になっていた。そこで「子どもたちの噛む力を強くしよう」と考え出されたのが「グミ」だった。ゼラチンに甘味を加えて作る。子どもたちに愛されるように、形は可愛らしい熊の姿だった。ハリボー社の「グミ」は、発売100年経った今でも、日本の店頭に並んでいる。

そんな「グミ」に注目した日本の菓子メーカーがあった。「明治製菓」(現・株式会社 明治)である。チョコレートやビスケットなど人気のお菓子を次々と作ってきたが、新たな商品の開発のために、1979年(昭和54年)、開発担当者がヨーロッパへ視察に出かけた。そこで出合ったのが「グミ」だった。「これを日本で“新しいお菓子”として開発したら、きっと楽しい商品になる」。明治製菓の「グミ」作りが始まった。

「初の国産グミ『コーラアップ』・1980年」提供:株式会社 明治

もともと「グミ」は、キャンディーとゼリーの中間のようなもので、いろいろな形にできるし、いろいろな味もつけられる、豊富な可能性を持っていた。ドイツの「グミ」は、噛むことを目的としていたため、とにかく硬かった。そこで、日本人の口に合う「柔らかさ」「弾力性」「食感」「歯切れの良さ」を研究した。多くの人が美味しいと思う「味」も研究した。そして、1980年(昭和55年)に、初の国産グミが誕生した。商品名は「コーラアップ」、親しみやすいコーラ味だった。べたつきをカバーするため、最初はオブラートに包まれていた。「コーラアップ」は、発売直後から人気を集めた。

「『果汁グミ』第1号・1988年」提供:株式会社 明治

この人気を背景に、明治製菓は、さらなる味を追求した。子どもから大人まで、沢山の人に食べてもらえるお菓子にしたい。思いついたのが、フルーツ味。果汁の「グミ」を作ることになった。「コーラアップ」で培った製造方法を活かして、果汁や果肉の「味」「香り」「色」を取り込んだ、濃縮果汁100%の「グミ」が誕生した。1988年(昭和63年)に発売された果汁グミ「グレープ果汁100」と「オレンジ果汁100」。それぞれ「ぶどう」「みかん」の形がイメージされていて、大ヒット商品になった。味の種類は、いちご、マスカット、桃などへと増えていった。誰もが食べやすいフルーツ味を採り入れたことで「果汁グミ」は、グミの主役とも言える存在になっていく。

「珍しい箱型『ポイフル』」提供:株式会社 明治

他の菓子メーカーも、グミ市場に参入した。刺激味を売り物にしたグミ、つぶつぶ感を活かしたフルーツ味のグミなど続々と新しい商品が登場。国産初のグミを作った明治も、小さな粒で“ポイポイ”食べられる「ポイフル」や最初の商品を進化させた「じはんきコーラアップ」などを発売して、グミ市場をさらに活気づかせる。スイカを切った形のグミ、鮫の形をしたシャークグミ、地球儀の形をしたグミ、そして、宝石のようにカッティングされたグミなど、各メーカーのアイデアもますます増えて、楽しさも演出されていった。2023年4月には、伝統ある旅行ガイドブックとコラボした「地球の歩き方グミ インド編」が登場し、話題になった。噛まなくても、口内の温度で溶けるグミも登場するなど、歯を鍛えるためにドイツで生まれたグミは、日本のアイデアと開発技術によって、大きく進化し続けている。

「キシリッシュグミクリスタルミント」提供:株式会社 明治

今やコンビニエンスストアのお菓子コーナーでは、チョコレートやガムを抑えて、グミが売り場面積の半分近くを占めている店もある。グミの国内市場規模は大きく伸びて、2021年には初めて、ガムを抜いた。グミは、まさに“お菓子界のトップランナー”に躍り出たのである。

「グミはじめて物語」のページには、日本のお菓子文化の歩み、その確かな1ページが“色とりどり、味もとりどり”今日もプルプルと愛されている。

          
【東西南北論説風(439)  by CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※CBCラジオ『多田しげおの気分爽快!!~朝からP・O・N』内のコーナー「北辻利寿の日本はじめて物語」(毎週水曜日)で紹介したテーマをコラムとして執筆しました。

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